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どの程度が最悪かは状況の良し悪しによるよね
ソフィが目を覚まさない。

「ソフィ…ソフィったら、起きろよ…!」
「傷は治ったはずなのに意識が戻らないなんて、どうして…?」

シェリアとヒューバートとイカロス、三人分の癒しの光は体は治したけどソフィを連れ戻してはくれない。

───やりすぎるな、反動が怖い
───つかスキル使いすぎでお前が倒れたらどうしようもないだろ

「っかってんだよ!」

突然怒鳴ったから隣にいたシェリアの肩が跳ねた。
だって怖い。明滅繰り返すソフィの体、このまま光の粒子になって消えちゃったらって思うと怖くて仕方ない。

「これでソフィまでいなくなったら俺立ってらんない…!」

いつ来ても雪がちらつくフェンデルの港、悪い視界を更に涙で歪めるとイカロスが小さく舌打ちした。

───仕方ねぇな…

『ヒューバート、シェリア、いっぺん休め。後は俺が看る。頃合い見て交代して。アスベルと教官は担架。いい加減屋根の下行こう』

突然響いたイカロスの声に全員が一瞬固まって、その後はすぐに動き出した。

「イカロス…?」

───妥協点だ
───次言ったらちゃんと休めよ

イカロスのふてくされたような声に少し笑った。笑えた。なんだ結構大丈夫じゃん。
と、ソフィの手がぴくりと跳ねた。

「う……」
「…ソフィ!」

薄目を開けるソフィの周りにすぐさま全員が集まる。

───いや、どんだけ一体感あるんだよ

「茶化すなイカロス」
「ソフィ!」
「気が付いたのね、よかった!」

外に出てないイカロスの声をみんなが気にするはずもなく、とりあえずソフィの意識が戻ったことを喜んでいる。
ソフィは薄目のままゆるく辺りを見回した。

「ア……スベル……?シェリ……ア?
わたし……どうしたの……?」
「リチャードに攻撃されて意識を失っていたんだ」

うーわやなセリフ。

「リチャード……どうなったの……?」
「リチャードは………いきなり湧き出した繭のような物に飲み込まれて……」

完全に人間やめてきた感じだよねアレ。だったらリチャード返せや。
アスベルは少し俯いていたけど、視線を強くして言った。

「でもまだ死んだと決まった訳じゃない」
「リチャード……」

ソフィはぼんやりと呟いた。
止まらない体の明滅が強まった。

「う……うああああああ!」
「ソフィ!」

反射で召喚器を取った俺をイカロスの声が止める。

───やめとけ、下手したら逆効果だ
───結局俺ら、シェリア以外は応急処置くらいしか知らない門外漢なんだから

暴れていたソフィの体が落ち着いて、再度開けた目は焦点がろくに合ってなかった。

「……みんなは……みんなは……どこ……」
「え?」

ゆるゆると伸ばされた手をシェリアが取る。

「みんな……どこ……?どこにいるの……?」
「あなた、まさか目が……」
「ここです、ソフィ」

───最悪の事態は回避できた、と見るべきかな

「できたけど、さぁ……」

天を仰ぐ。空はひたすらに、灰色。

「こんな寒いところに寝かせておくのは良くないよ。ひとまず宿屋に行こう」

言ったパスカルの声を合図にみんながまた動きだす。
俺は冷たくなった手を一度握って、その後についた。


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