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ラントの王子
「今となってはすごく遅いが窓から侵入ってのはすごくどうかと思う」
「もう少し早く言って欲しかったです…」

ヒューバートが溜め息を吐いた。…俺ほんとこいつと友達になりたい。ヒューバートの苦労増やすだけな気がするけど。ひしひしと。
とりあえず。

「…ラント家のお客は王子でした、と」

金髪さらさらヘアーだぜ。クマにも勝てそうな王子っぷりだ。…いや本気で王子だなんて思ってないよ? でもいいとこのお坊っちゃんではあるんだろうな…仕草とかすごい優雅だし。
…その分苦労してる台詞吐かれた。

「…どうせ僕の歓心を買って利用しようと思っているんだろう」
「待ってストップおじさん泣きそう」
「…おじさんって年じゃないよね」

ヒューバートの突っ込みは無視させてもらって椅子の背にすがりついた。やべぇなんだこの重い話。
つーか本気でそんな話しかしない奴しかいなかったのか王子(あだ名確定)の周り! 淋しすぎて俺涙出ちゃうよ!
騒いでたら護衛っぽい人入ってきた。…いやもうちょっとこうさ、子供だから甘く見てるの丸分かりな口調やめよう? いい年した大人としてどうなのそれは。
…いやまず俺がやめようよ、いきなり悪い人認定はよくないよ。なんか死ぬほど子供嫌いだけどいい人って可能性もなきにしもあらず。…なんかだいぶ駄目な人みたいなこと言ったなー俺。
王子が明らか仮病使って剣の稽古サボろうとして、なぜかアスベルが相手することになった。なぜー。

「ところでアスベルはもうちょっと人を疑うことを覚えるべきだと思うよ」
「アスベル単純だもん」
「兄さんだからね…」

一人だけ王子の仮病に気付いてないアスベルに、幼なじみと弟がわりとひどい評価をしていた。
ビアスっつったっけ…構え変。素手なだけハンデだろうけど…プロだろ? 大丈夫かねアスベル。
アスベルが真っ直ぐ突っ込んでく。…ちょ、組み技じゃなくて突きかよ!? 待て待て加減してあんだろうな、腹に食らって内臓破裂なんてやったらシャレんなんねーぞ!?
俺らが気を揉んでるのにアスベルは楽しそうだ。…こいつは本気で周辺視野とか修得した方がいい。

「おおっ当たった!」
「まぐれでもすごい!」

完全にアスベル馬鹿にしてんな俺ら。でも上等じゃねぇ?
もう終わりだと思ってたらビアスが鋼鉄製の爪を出した。
へえこいつ格闘家なのか、構え変なはずだよなー。…じゃなくて!

「おいおいおい大人気ないのもいい加減にしろよ!」

ガキのまぐれにマジ切れかよ! よく騎士の認定試験(的な何か)受かったなあんた!
即他の護衛の人が止めてくれて落着。あー焦った…つかあーゆーことされるといい人認定難しくなるんだけどな。あーでもいい人なんだけど三流っているよなー。多分あの人そうなんだよ。これもひどいか。

「とりあえずあそこまでされてんのに頭下げるお前に感心したよ俺は」
「だって、稽古つけてもらったんだから当然だろ?」

そう言うアスベルの頭を撫でたら「子供扱いすんな!」って逃げられた。
…正直父親への反発だけだと思ってたんだけどな、騎士の話。こいつなりに結構本気なんだ。


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