ソフィとラムダと王子
世界の中心の孤島。
そう呼ばれる場所に、星の核への入り口があるらしい。
俺はぼぅっと甲板の手すりにもたれて、アスベルとソフィの話を聞き流していた。
───ソフィは本能でラムダが敵だって認識してるのかもな
「やっぱ聖堂地下抜けた後の反発はそのせーか…」
そもそもが相反するものであるらしい。
何が間違いで何を知らないんだろう。降りた悪魔はラムダか?使わされた天使は本当にプロトスヘイスか?
「とりあえずソフィ=プロトスヘイス説から覆してみる?」
───あくまでも予想は予想だしな
───ソフィの自我が悲劇になるのはほぼ確定だろうけど
「記憶戻った後どう転ぶかが怖いよなー」
相変わらず空は青くて、見上げてると目が痛くなるほどだった。
「…王子も。全部終わった後、すごい針のむしろだろうな」
───原因はどうあれ十割被害者ってわけじゃないだろ
───だいたいそういうことは戻す方法見つけてから考えろ、順番違う
「へーい」
相変わらず溜め息しか出ない状況だね。王子ー早く戻ってきてよー…。
「王子…」
相変わらず鳥っぽいのに乗ってるリチャードは、いつにも増してきつそうだった。
───どー考えても力の溜め込みすぎだな
「まったく手間のかかる王子サマだねお前はね」
ざくざく近付いていくと黒のオーラっぽいやつに遮られた。この野郎。
「おいこら王子!聞こえてんのか!?」
「うるさい…邪魔を…するな!」
リチャードが剣を抜いた。聞けよ。つかリチャード出せっつってんのになぜにお前が答えるか。
「ゆきみち!勝手に一人で先走らないで下さい!」
「はいはい…ったく、いいからお前はどけっつの!」
ぶっちゃけラムダは後でどうにでもなると思ってます俺。なんかまた更に黒幕登場!とか言われそうだし。いいもん慣れたもんくすんくすん…しまった寒い。
第一目標リチャードの手、だからね。俺。
「捕まえに来たよ、王子」
大根抜き人員揃ってるし。とっとと気付いて手ぇ伸ばせ、ばぁか。
膝を付いた王子にソフィが近付いていく。
「マタ……キサマカ……プロトス1……!」
ぎらつく目で言った王子(多分ラムダの方)にソフィは首を振った。
「違うよ……わたしは……ソフィだよ。
リチャード……友情の誓い、しよう。そしたら……きっと……」
手を伸ばすソフィを止められない。でも近付こうとも思えない。
どくんどくんどくんどくん。
今はどっちだ。下手に声かけられない。召喚器に伸ばした手を止めて戻してまた伸ばす。
クルシイ……
コロサナイデ……
それはどっちの台詞だ。
「王子…っ!」
なぁなんで俺がいつまでも王子って呼んでるか知ってるか。
お前が「もう王子じゃないよ」って笑ってくれるの待ってるんだ。
───どれくらい自我が喰われてるか、だな
ソフィは手を伸ばしてる。どうかその手を取って。
「ソフィ……
消えろ」
リチャードはあっさりと剣を抜いた。
「ソフィ────!」
吹き飛ばされて身体中打ったことを言い訳にして、俺は少し泣いた。
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