巻いていこー
現在雪道行軍ふたたび。アンマルチア族の里へ向けて真っ白い山を登ってます。きついです。ストラタ行きたい。いやあそこ暑いか、ウィンドル行きたい。もっと言うとラント行きたい。
「いやポアソンまじ天使」
一瞬本気で後光見えたもん。ナイスタイミング、あのときフェンデルに指名手配なんてされてたら俺マジ立ち直れない。間違いなく底まで落ち込んでイカロスに喰われてたね、ゆきみちたくとっていう自我が。
「………」
「ちょ、何その冷たい目!俺別にロリコンじゃないから!さりげなく一歩離れるなヒュー!」
俺は横を歩くヒューバートに主張した。俺は基本的にかわいいものを愛でる主義なだけで十五歳以下の女の子限定で愛してるわけでは断じてない。だったら小学生の菜々に近付けるわけないって、八十稲羽の番長に殺されらぁ。
「比喩だから単なる!マジで感謝してんだって、俺あん時本気で落ち込んでたし、とりあえず前進のヒントもらえて持ち直したから」
「………」
「まぁかわいくないなんて死んでも言わないけど」
「離れて下さい変態」
「うわっちょっおまっその認識は改めろマジで!」
わざわざ流氷の中まで来たポアソンは、英知の蔵の鍵とばさまからの伝言をくれた。
ラス…なんだっけ、とにかくそこにリチャードが向かうだろうって。後は英知の蔵で自分たちで調べろ、だそうだ。
フェンデル大総統と話つけてくれるし、もうマジかっこいいポアソン。脅してたときは先がちょっと怖くなったけど。
アンマルチア族いい人多いよねー。フーリエさんとか絶対いい人だと思うんだ。ちゃんと話してみたいなぁ、頭いい人の話聞くの好きなんだ俺。
「ふふー」
「突然笑わないで下さい。不気味です」
「うわひでぇお前。いやさ、ちょっと思い出し笑い?」
流氷の中で、教官が突然残ると言った。
カーツさんの意志を継ぐ、言われて止められない俺たちの中で、ヒューバートだけが声を上げた。
「嬉しかったんだよね。ヒューが教官がここに要るって言ってくれて」
「そんなことを言った覚えはありません」
ヒューバートが眼鏡を押し上げた。照れてんの丸分かりですが。
嬉しかった。ちょっと前にわんわん怒鳴ったばっかりだったし。ヒューバートの合理主義なら、正直置いて行っても不思議じゃないと思った。
「今彼に抜けられるのは戦力的に痛いと思っただけです。リチャード陛下の力は間違いなく増していて、ただでさえ陛下に剣を向けるのを厭う兄さんと、ソフィの士気は間違いなく下がるでしょうし」
「とか言いつつ顔赤いけどな」
指摘するとそっぽを向かれた。ツンデレってわかりやすくていいよな。
「赤くありません。でたらめを言わないで下さい」
「あと照れたときに眼鏡直す癖直した方いいよ、アスベルですら気付いてるし」
アスベルの評価が低い?知ってる!
…あいつ基本スペックかなり高いはずなのになんでこんなに駄目な感じするんだろう。
「だから照れてません!」
「照れてる照れてる超顔赤い、ついでにその短気も直した方いいぞー、俺みたいのがいじりたくてうずうずするから」
……ヒューバート幼少期ストラタ編、周りがいじりすぎて性格変わったんだとしたらどうしよう。かっわいかったもんなーヒューバート幼少期。どっかにヒューバートの仕官学校時代のお知り合いいませんかー、詳しく聞きたいできればアスベルとシェリア付きで。
「あなた今失礼なこと考えませんでしたか」
「いや別に。ついでだからわざとわかりやすく反応して相手だまくらかす研究でもすればー?」
「…一つの手ではありますね」
ヒューバートは顎に手を当てて考えだした。ついでだから「最年少佐官」も利用するといい、ただでさえ若手馬鹿にする奴の多い上層部、油断してひっかかってくれるならいくらでも思惑通りに動いてくれるだろう。
ヒューバート頭いいからな。上手に使ってのし上がっていけそう。
「でも俺つまんないからしばらくそのまんまでもいい」
「アドバイスをしてるのか引き回してるのかどっちですか!」
「え、ヒューバートいじり」
「………」
「さーパスカルのところでも行くかな!」
無言で双銃構えるヒューバートから目を逸らして、さりげなくシェリアを盾にしながらパスカルのところまで逃げた。こえーこえー、やめないけど。
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