なんか明るいニュースありませんか
「カーツ、しっかりしろ!カーツ!」
「イカロス来られるか!」
『無理でもなんでもやれって言うんだろ!』
シェリアの横でイカロスを呼ぶ。やだ、ひどい、今日までさんざん無理してたツケも来てる…!
カーツさんの薄く開いた目がパスカルを捉えた。
「パスカルさんと言ったな……どうか君の手で研究を完成させてくれないか?大輝石の制御は我が国の悲願だ……なんとしても研究は続けなくてはならない。
君の研究が完成すれば我が国は救われる。だから……どうか……」
どうしよう…末期ガン患者の担当になった医者の気分だ。どれだけ頑張っても引き伸ばすしかできない。
この人は死ぬ。
「カーツ…」
「マリク……交代だ。ここから先はお前に任せた」
カーツさんが瞬きした。眠そうだ。リアル「寝たら死ぬ」見たの初めて。…ふざけてる場合じゃないけどさぁ、馬鹿なこと考えてないと俺泣きそうなんだよ!
「頼む……どうか我が国の未来を導いてくれ……」
伸ばした手は教官が取る前に落ちた。
「カーツ!しっかりしろ!死ぬな…カーツ!」
教官の泣きそうな顔も初めて見た。
───俺は上見張ってるから
イカロスが囁くのに口を覆って頷いた。でないと俺大声上げる。泣いていいのは教官であって俺じゃない。
カーツさんが目を閉じた。
しばらくはみんな無言だった。
「カーツさん……死んじゃったの……?」
ソフィが言った。誰も答えられなかった。
「もう……会えないの?」
「ああ…」
くそ失態だ、教官に答えさせるなんて。でも俺今声出したら泣く。いやもう泣いてはいるんだが。
「そんな……教官とせっかくまた会えたのに……」
ソフィがゆっくり膝をついた。
「だめだよカーツさん、戻って来なきゃだめだよ……」
「ソフィ、もういいんだ……静かに眠らせてやってくれ」
教官の顔を今見てはいけない気がしたから俺は動かなかった。動けなかったとも言う。
───取り込み中悪いが、問題二つ目がお越しだ!
「なっ?なんだあれは!」
…リチャード。
「とりあえずお前アレだ空気読め!」
ああもうひっどい声。通らないし最悪。
リチャードは全無視で大輝石に繋がる装置の上に乗った。
「ようやく見つけたぞ……これで三つ目だ」
「イカロス!」
必要なら叩き落とすつもりでリチャードに向かっていったイカロスは、リチャードが連れた鳥みたいのに妨害された。
そうしてまた原素が吸われていく。だからどういう理屈だっつの。つかお前体大丈夫なのかよ!
「リチャード、やめろ!」
「……邪魔をするな!」
自分も装置の上に登ったアスベルはあっさりふっ飛ばされた。ちょ、けっこ距離あるぞ…待て待て追撃はないだろ!マジアスベル死ぬんだけど!
───落ち着け、ソフィが行ってた
「いやそれはそれでソフィが心配なんだけ、ど」
埃だか氷だかが収まったとき、ソフィは平然と立っていた。…後ろで倒れてるアスベルなんというヒロインポジ。
ソフィが光りだす。ラントのときとはまた違うのか?
「って、アスベル無事か!?」
───お前実は図太いよな
「どーゆー意味だ!」
ソフィが駆けてくのと入れ違いでアスベルの方に走る。うわ壁走ってるよ…今更だけど現実離れしてるよな。
「我は消されぬ!決して消されはしないぞ!」
何年越しの喧嘩だか知らねーけどリチャード巻き込むなよ。これ以上誰が死んだのなんだの言われたら俺本格的に立ち直れないんだけど。
ソフィが弾き飛ばされた。大輝石がどんどん色褪せてく。間に合わなかった、か…くそ。
「よし……これで残るは……」
リチャードは色をなくした大輝石と俺たちを置いて、またどこかへ飛んでいった。
───残るは、か
───まだやることあるのかあいつ
「ごめんイカロス、今頭使いたくない」
また熱出そうだ。呟いて、アスベルとソフィの治療にかかった。
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