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ソフィとお話
「…ソフィ」

アスベルと戦った後、息を整えていたソフィが俺を振り返った。

「…なんで突然アスと試合したんだ?『アスベルは友達』って…なんだよ」

ソフィは無言だった。
俺はイカロスを呼んでソフィの傷を治した。

「…ゆきみちは、友達とケンカしたことある?」
「口喧嘩なら数限りなく」

いお先輩とか天田とか、花村に直斗に完二とも、じゃれあいみたいな言い合いなら千や二千じゃきかないくらいにやってきた。真田さんとは単なる突っ込みだし、番長は…いやあれは喧嘩じゃない。支配って言う。
思わず遠い目をした俺を置いてソフィは続けた。

「アスベルと戦って、友達でも戦えるってわかったの。でも殺したいとは思わなかった」
「そりゃ普通、友達とか仲間とかは傷つける対象じゃないしな」

試合とかなら教官たちがやってるけどな。リチャードもなんだかんだでアスベルとやってたっけ。
そこで気付いた。

「……王子か」

ソフィは答えない。沈黙は肯定とはよく言った。
ここで普通なら、友達に刃を向けられるかとかそんな覚悟の話だと思う。ぶっちゃけ俺もそう思いたい。
でもソフィだ。
リチャードの中にいる誰かに全力で睨まれたソフィだ。

「、」

言いかけてやめた。これはひどすぎる。

───リチャードを殺すのが怖い?

お願いイカロス、後生だからそれソフィに言わないで。
目をつぶる。固く。

「…リチャード、連れて帰ろうな」
「うん…」

俯いたまま言っても意味ないなんて、きっと二人ともわかってた。






引き続きの雪中行軍、俺は惰性で足を動かしながら必死で考えていた。

ソフィのなくした記憶がリチャードの中の誰かに関係あるのはわかりきってる。誰も気付いてないけどな、きっと俺がこの世界の外から来たからわかったことだ。客観視って難しいらしいし。
そう、俺はこの世界の法則その他決まりごとの外から来た人間だ。

(それをどう使えばうまくいく?)

これは誰にとって有利で誰にとって不利な要素だ。
どう考えればいい。ソフィの眠り、再生、記憶が飛んでいた訳は再構成の弊害か?そう考えるならアスベルたちに会う前にずいぶん大きなダメージを負ったことになる。
聖堂の地下、あそこで会った黒いなにか。アレがリチャードに憑いたとして何が目的だ?世界の崩壊とかだったら笑っちゃうな。その分止めるの大変だけど。
ソフィが前からアレを知ってるとして。アレはいつからいたんだ。ソフィはいつからいたんだ。
そもそも俺が無意識に頭に置いてる「リチャードになにか憑いてる」と「ソフィは人間じゃない」はどこまで正しい?

「くそ…っ」

───荒れてるな

「ごめんイカロス、今なんか言われたら確実にキレる。黙って」

───俺としては好都合だけど?

「頼むから、イカロス」

変に潰したせいで歪んだ声が出た。
時間がほしい。せめてバロニアの歴史にアレが関わってたかどうかくらいは知りたい。今までアレが何かしたなら絶対記録が残ってる。

(頼むからもうちょっと待てよ王子…!)

当然俺はその当時、リチャードの歩みが遅れる、イコールあいつが一人きりで苦しんでいる、ということに気付いてなんかいなかった。


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あきゅろす。
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