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憎まれ役
「やっぱり里で待っていた方がいいんじゃない?」
「待ってっつっても俺一人で戻るのは危ないからとか言って全員ついて来るんだろ?二度手間じゃん」

散々泣き喚いた俺のせいで研究所に着くのが遅れている。夜になる前に着かないと本気で遭難するだろう。
ヒューバートが溜め息を吐いて眼鏡を押し上げた。

「…時間が惜しいのも確かです。進みましょう」
「ですが、とかは言わんでもいーよ。自主的に後方待機してます」

実際指先感覚ないしな。引き金引きにくくて嫌になってたとこ。
そんなこんなで多大な迷惑…っていうと卑屈か?とにかくみんなに心配かけてたどりついた研究所。
でかい。

「大輝石あってもおかしくないだろこれ…」

溜め息吐いてると、ヒューバートが近寄ってきた。

「…体調が優れないのであれば、入り口付近に留まっていてください」
「やだし。行くし。置いて行くなし。…なんかあった?」

寒さのせいだけでなくヒューバートの表情が暗い気がして聞くと、ヒューバートは少しためらった後で聞いてきた。

「…仮にリチャード国王が一連の行動を止めようとしない場合、あなたはどうしますか」
「王子?」

また唐突だな。一連の行動っつのは大輝石の原素をとってくことだろ?

「止めたくても止めらんないだろ」
「…どういう意味ですか」
「あれ王子じゃねぇもん」

あんな禍々しいオーラ放つやつがまともな人間なわけない。つかまともな人間が原素吸い取れるかよ。しかも大輝石だぜ?大きさ的な意味でも無茶だね。つか体大丈夫だろうなあの馬鹿。

「…何か根拠があるのですか?」
「勘。でも王子がそういう素養を持ってたってより、なんかタチの悪いのが王子を好きにしてるって方がしっくり来ない?」

だってリチャードだぜ?権力闘争に嫌気が差して戦うのが嫌で、そんな奴がラントの人間皆殺しの勢いで襲撃かけて、おかしいと思わない方が頭おかしい。
なにか考え込むヒューバートに話を戻すよう促した。

「で、何なわけいきなり」
「…いえ。いざリチャード国王と対峙したとき、躊躇われると足並みが乱れますので」
「馬鹿言え、それだけじゃないだろ」

正確には「それだけを考えることが不可能になった」、だけど。
ストラタのオズウェル少佐としてはそういう考え方は面倒だろうけどな。俺はヒューバートがそうなるなら大歓迎。

「…ぼくは」
「ん」
「…兄さんに、友人殺しの名など、背負ってほしくはないんです」

こくんと喉が鳴った。
…さっきの質問は、リチャードを殺せるか否かを問うためのものか。

「あの人にそんなものは似合いません。…罪ならぼくが背負います」
「ばっか…俺はどっちにも背負ってほしくねぇよ」

絶対無事で取り返す、呟いた声に返事はなかった。


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あきゅろす。
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