軍人は疑うのが仕事、です?
「とりあえず情報収集?余所もんに冷たそうだけど教えてくれんのかね」
帝都ザヴェート。
街並み的には産業革命期の東欧って感じ。明らかドイツじゃねーかよ…白と黒と灰色ばっか。
ここが雪ばっかなのってこの煙のせいじゃねーだろーな…あーここはエネルギー問題と同時に大気汚染かよ、その辺は穏やかに解決しとけよRPG。
───夢見すぎ
「うっせー。…ってあれ?」
黒服接近中。…やばい?
「お前たち、何者だ?フェンデル人ではないな?」
フェンデルどころか異世界人ですなんて言えませんね。どーすんのこれ。
「フェンデル国軍所属のマリク・シザーズだ。国外偵察任務より只今帰還した」
うっお教官!?
教官は部隊証を見せて更に「大総統にちくるぜ」を大人のオブラートに包んで言った。あからさまな気がする…脅しなんてそんなもんか。
「はー…すげぇ教官」
「只の時間稼ぎだ。オレはとうに除籍扱いだろうしな」
…教官味方でよかったー。こんな応用力ある大人敵に回すとか自殺行為だから。
「というわけだからそろそろ睨むのやめようなヒュー」
「どんなわけですか」
俺はヒューバートを引きずって情報収集に向かった。
「みんなが言ってるアレってなんだろな」
「あまり食い付くと怪しまれそうですし…」
…ていうかしまった、パスカル放置だけど大丈夫だろうか。教官が拾っといてくれてないかな。
「あ、パスカル」
「たいへんたいへん!大変だよぅーっ!」
やたら慌ててパスカルが走ってきた。て、こらお前引っ張るな!
「フェンデル政府が大輝石の実験をしてるって!」
「あ、そおなんだ」
広場っぽいとこにみんなが集まった。何焦ってんだパスカル。
「フェンデルの大輝石って、他のと比べて特殊っていうかさ。簡単に原素が取り出せないんだよ」
「だから実験かー」
当然って気もするけど。つかむしろそれ使って暖房設備作れって感じ。
「大輝石で実験してそれが失敗しようものならとんでもないことになるよ」
「…具体的には?」
「フェンデル全土が吹っ飛んで済んだら御の字…ってとこ?」
「まずいじゃん!」
そりゃパスカルでも焦るわな。つか結局大輝石の在処わかんないんだけどどーすんの。
「ねぇパスカル……あなたどうしてそんなことを知ってるの?」
「道の途中にあった穴、あれあたしのせいだもん」
シェリアの質問にパスカルが軽く答えた。そりゃよく知ってるよな…。
…ヒューバート、顔が怖いぞ。どうした。
「だからまずいんだって。たぶん大輝石の実験に使われてるのもあたしの技術だよ」
「実験に用いられているのはアンマルチア族の技術じゃなかったのか?」
「あたしアンマルチア族だもん」
………。
「教官俺そろそろ突っ込むの疲れてきた」
「頑張れ」
追い付きません。気力体力的な意味で。
…あ、あの黒服やばそう。
「な、とりあえず移動、」
「待ってください」
ヒューバートが俺の声を遮って言った。うわヒューバート、だいぶ、キてる。
「どうしよ教官…あれ、あいつら明らか俺ら狙いなんだけど」
「早くこの場から離れたいところだが、」
ヒューバート…完璧頭に血ぃ登ってんな。あれ収めんの大変だぜー。
「ぼくは…隠し事をする人は昔から嫌いなんです。こんな人たちと行くのはごめんだ」
「ヒューバート…」
アスベルが声をかけあぐねている間に黒服に囲まれた。
「貴様は一体何者だ?マリク・シザーズという人物はとうに死亡しているではないか!」
「なるほど。そういう扱いになっていたとはな」
「感心してる場合っスか!走れ走れ、おら行くぞヒュー!」
ヒューバートの腕を引いて走り出す。空気壊してくれたって意味では感謝するけどね、捕まるのはごめんだよ!
[←][→]
無料HPエムペ!