まだ着いてないけど帰る話もするよ!
「ぁん?昨日教官いなかったん?」
「ああ。ささやかなコンサートをな」
翌朝、あくび混じりに言うと教官がベッドの横に立って笑った。
ちゃんと笑ってるな。よかった。教官は誰もいないとこで凹んでそうだけど。
「んんー…まだしばらくヒューの風当たり強いかもだけど、まぁ辛抱してやって?悪い奴じゃないのは知ってるっしょ?」
「そうだな。アスベルは優秀な弟を持ったようだ」
「ふふん、俺の自慢でもあるんだぜ」
俺が自慢してどーすんだって感じでもあるけど。
ベッドから降りて教官を促した。
「んじゃ朝飯行きましょ教官。今日もまだ歩くんしょ?」
「ああ。ザヴェートへは一度船に乗る必要がある。今日中に港には着きたい」
トンネルを抜けた先に変な人がいた。
「あ、今お前変な人って思っただろ」
「読むなよ!」
ロックガガンの中にあった小屋にいたのはこの人らしい。つかなんでいたんだ。
「ロックガガンの毛が、とにかくほしいわけよ。ロックガガンの毛が」
「毛とかあるんだ…つか自分で行けし」
「あ、俺パス。足冷たくなっちゃったし。じゃ、よろしく」
「おおい雪国出身!」
日常茶飯事じゃんかストラタあったかい通り越して熱いから行ってこいよ自分で!
叫んだけどスルーされた。なんだったんだろう。
「あ、キャベツあるキャベツ」
そういや雪国って雪の中に野菜入れて保たすんだよな…天然冷蔵庫。
「やっぱ持ってっちゃ駄目だよな」
「当たり前でしょう?」
怒るシェリアの向こうでヒューバートが考え込んでいた。
「どしたんヒュー」
「あ、いえ…ぼくたちは高原の雪を見たことになったのだな、と」
なにそれ。
首を傾げるとヒューバートが感慨深そうに言った。
「これまでストラタ軍の中で、この高原の雪を見た者はいません。なにせフェンデル山岳トンネルを越えて帰ってきた者は一人としていませんから」
つまり殺されたわけですね。
「んじゃヒューの最年少佐官にハク付けてやりますかね」
当然ちゃんと全員帰る気である。当たり前。
「ヒュー」
「なんですか」
「船でソフィと何話してたの」
「別に…大したことは話していません。…記憶がないことを不安がっているようでした」
「んー…」
ごまかされた感あるけど、まぁいいや。
ソフィか…怪しさ満点なのはソフィも同じなんだよな。考えたくないけどね。
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