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フェンデル到着、暴露確定
「うあああああ真っ白!」

流石雪国。本州の関東以南じゃお目にかかれない光景だな。
途中にぼろぼろ黒服たくさん。何なのこの厳戒体制。ナチ下のドイツかよ。ドイツって寒かったっけ?

「さむ、っていうかさっぶ!防寒具買おう防寒具!」
「くっついたらあったかいかなー?」
「どさくさに紛れてソフィに近寄んな!」

油断も隙もありゃしない。

───ゆきみち

「ん?どしたイカロス」

───沈んでんな、教官

「あー…」

フェンデルに近付くのと比例して、無口になった教官の背中を見る。近寄るなオーラ出まくり。

「フェンデル出身とか言うかな」

───三国股にかけ、か
───ご苦労なことだな

「確実になんかあったな」

───聞きたい?

「今はやめとく。宿とった後にでも聞くよ」

切羽詰まる前に聞いときたいところなんだけどな。ヒューバートがキレるから。
全員それぞれ外套買って、とりあえず手近な街に出発。ベラニックというらしい。

「つーかさヒュー」
「なんですか」
「軍服。着替えなくていいの?」
「…着替えはあるんですが」

あれ、歯切れ悪いな。珍しい。

「…手違いがあったようで、着ると逆に怪しいんです」
「えー、余所の国の軍服以上に怪しい服ってどんな」
「………」
「言えったら」
「……し、執事服……」

………………。
ええと。
うん。

「…似合うと思うから今度見せて」
「嫌です」

ちっ。






道の途中にでかいクレーターがあった。

「輝石の暴走ー?」
「そ。この国の輝石は性質が厄介でね、コレができたときに使った輝石は、こーんなに小さかったんだよ?」

パスカルが示したのは、下手な豆よりよっぽど小さい大きさだった。

「…やばくね?」
「やばいよー」

パスカルはけたけた笑ってる、けど。
…なんで知ってんのそんなこと。

───信じるって言っといて疑うんだ
───二枚舌
───ずるいよ?

「わかってるったら」

話聞かなきゃならない数が増えたようです。溜め息溜め息。






で、たどり着いたベラニック。

「…待って。待ってフェンデルの街ってこれがデフォ?普通?」
「まぁ、そうだな」

なんで教官知ってんのってのは置いといて。
絶句。ユ・リベルテが豪勢だった分尚更。
寒村って言葉が相応しい廃れっぷり。子供が地面をいじくっていて、何してんのかと思えば輝石の欠片を拾っているそうだ。

「燃料用の輝石は出回っていないんですか?」
「元々、この国は輝石の流通量そのものが少なくてな。そのわずかな輝石も富裕層が独占している状態で、一般にはほとんど出回らない」

ほんと言葉ない。なんだこの状況。

───ここがただ穏やかに平和な世界だとでも思ってた?

「…思い、たかった」

苦しい。苦しい。ラントが懐かしい。
これは逃避だろうか。

「…ずいぶんと、この国の事情に詳しいですね」
「まぁ、な」

あ、ごまかした今。

「教官」

きつい声出た。へぇ俺こんな声出せたんだ。

「ごまかすな。輝石の欠片とかそんなもの、少なくともこの国で一冬越してなきゃわかんないことだ」

さっきあの子らに渡した角だってそうだ。フェンデルの固有種、普通角が燃料になるなんて思わねぇよ教官。

「教官ってフェンデルの人ですか」
「この年になれば、大概の情報は勝手に耳に入るものだ」
「ごまかすなって言った。俺だって聞かれないから言わないことはあるからそれはいいけど、聞かれたことはちゃんと答えろよ」

ヒューバートが俺を見た。うん待って、今教官の話。

───ずいぶん勝手だな

知ってるよ。誰だって話したくないことはあるし俺も未だに先伸ばししてて話してない。でもここで話してくれないとヒューバートが教官を信じられない。
これも勝手な話だけど、俺が好きな人同士はやっぱり仲良くして欲しいんだ。

「隠し事はなしで行きましょ、教官。最年長なんだからそこらへんはきっちりしてもらわないと」

教官がこっちを見た。一瞬怯んで唇噛んで耐える。負けない。
そうだよ俺は教官を疑ってる。疑いたくないから俺の都合で問い詰めてるだけだ。
教官が溜め息を吐いた。

「…確かに俺はフェンデルの人間だった。とうに国を棄てた身だがな」
「詳しい話聞いていい?」

教官は唸りながら頭を掻き回した。

「聞いて面白い話ではないぞ」
「別にユーモア求められるようなヌルい過去持ってるなんて思ってません」
「わかった…とにかくどこかへ入ろう」
「うぃーす」

ベラニックに一軒しかないという宿に向かう途中、ヒューバートに「あなたの話も聞かせていただきます」と言われた。

「やだよ、今日は教官の話で頭いっぱいになりそうだもん。さっきパスカルに話振るの忘れたからどーやって聞けばいいか考えたいしさー」
「そんな言い訳は通用しません」
「いや話さないなんて言ってないし。つーか元々ヒューのせいで引きずってんだからなこの話」
「どういう意味ですか」
「知らないっ」

無理やり話切って宿に入った。


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