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コロッセオの盤上にて
※ぎじんかイカロス視点


どくどくどく、鳴る心臓は一人分だけど(だって俺心臓ないし)、昂揚する感情は二人分だ。

(あっは、)
(こーふんしすぎ、あの馬鹿)

テンション上がりすぎて暴走したらどうしてくれんだろう。

「…本当に、イカロスなんだな」

溜め息に混ぜて言ったのはアスベルだった。

『まだ信じてくれない?』
「そうじゃない。…まだ少し、見慣れないだけだ」

アスベルは少し言葉を探して、ほら、と言った。

「いつもは白い服だし、ゆきみちとそっくりだから…少し戸惑ってる」
『コレ?ゆきみちが黒服ってかっけぇよなって安易な憧れ持ってるからこういう感じなだけだけどな。ちなみにアスベルは白が似合う』

アスベルが複雑そうに「ありがとう」と言ったとき、上昇していたステージががこんと音立てて止まった。

『ん、次で終わりか』

ステージの向こう端に見覚えのある黒い軍服。そういえばゆきみちの銃に特に突っ込み入らなかったけど、ストラタもフェンデルも銃火器あるからか。ウィンドルが完璧剣と魔法の世界だし、ちょっと意外。
そういやパスカルがあの銃にずいぶん興味持ってたな、と視線をなんとなく投げて固まった。

『…おい待て』

なんだそのバズーカクラスにでかい銃は。
そして銃火器があるということは後衛の俺にも攻撃が来る、ということに気付いて天を仰いだ。

『さいあく…めんどくさ』
「イカロス?疲れた?」

首を傾げるソフィの頭をひとつ撫でる。俺がこいつに甘いのは間違いなくゆきみちのせいだ。

『別に。あいつらの攻撃避けるのめんどくさかっただけ』

ソフィは向こうを見て、俺を見上げて力強く言った。

「大丈夫。イカロスもわたしが守るから」
『…はいはいありがとよ』

こいつらの博愛精神には感服するね。つか弾幕張られたら守るどころの話じゃないと思うんだけど。

「話は終わりましたか?…来ますよ」

ヒューバートがゆっくり構えるのに笑って応える。

『受け身は趣味じゃねぇよ。…行くぜ?』

喚声が起こった。






「ご苦労さん!よくやった!やっぱお前最高!」

戻ってくるなりゆきみちがきゃいきゃい叫びながら飛び付いてきた。
周りは固まっている。俺は元々ゆきみちの中にいたものだし、くっついている方が自然なくらいだけど周りにしてみりゃ微妙だろう。気持ちはわからなくもない。
助けたストラタのスパイはちゃんとフェンデルに送り届けてくれるそうで、俺はゆきみちの中に戻ることにした。

「楽しかった?」
『ん。楽しすぎて暴れすぎた。フェンデルまで寝てる』
「着くまで魔物出ないこと祈ろうか」

くすくす笑いながらゆきみちの心の深いところへ沈んでいく。
ゆきみちとこうして笑い合えることは、本当は奇跡じみたことなんだよな。
そう思う思考回路も、ふいにふつりと途切れた。


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あきゅろす。
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