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ヒューバート加入とイカロスの話
「…友達だから言えることとしなきゃなんないことって、あるから」

座り込んだソフィと目線を同じにして頭を撫でた。

「あいつが間違ってるなら教えて、直してやんないと。…な?」

ソフィが顔を上げて、そのときちゃんと笑えてたかどうか自信ない。






大統領の部屋にはヒューバートがいた。

「うっそお前なんで!?もしかして間に合わんかった!?」
「状況が変わったんです」

ラントにいたウィンドルの軍隊が王都に戻ったらしい。
リチャードが大輝石の原素を空っぽにしたから。

「…うそだろ」

呟いたのはほとんど反射。ほんとはわかってる。
道理であのビームみたいの、きれいな色してた。広場の大輝石の原素使ってたんだ。

「ふたつの大輝石がこうなった以上、最後のひとつも狙われると考えるのが自然です」
「最後のひとつって、フェンデルにあるんでいいんだよな?」
「ええ、リチャード陛下は次にそこへ向かう確率が高いでしょう」

つかほぼ確実だろ。
あーあ…溜め息癖になりそう。

───気苦労の多いことだな

あれ、イカロス。話しかけてくるなんて珍しい。
俺はちょっとみんなから離れて壁の方へ行った。

「どかしたのイカロス」

───決まってんだろ、お前の抱えてる不安さらけ出しに来たんだよ

「…王子のこと?」

───あいつは何考えてるんだろうな
───ウィンドルでもストラタでも、大輝石は要だ
───なければ死人が出るレベルのな

「うん…」

───十中八九何かに憑かれてる
───もしくは、俺みたいな心の闇に食われたかな

「やめてイカロス」

───考えたくないか?
───だがそういう不安は確かにお前の中にある
───…もしかしたら全部が手遅れで、大輝石は元に戻らない、リチャードは帰ってこない、大地には死人の山、なんてことにもなるかもな

「やめろ…っ」

小さく叫んだら、みんなにやたら注目されてしまった。

「ぇ、あ…ごめん、何?」
「どうしたの、ゆきみち…顔色悪いわよ」

シェリアが覗き込んでくる。あはは…やな汗かいてるや。

「うん、ちょっと考えごと?で、なんかあったん?」
「君たちにリチャード陛下の捜索を依頼したい、という話だ。引き受けてもらえるだろうか」

大統領が言った。こっちとしちゃ願ったり叶ったりだな。

「俺はいいですよ。あいつダチだし」
「私たちとしても、陛下や大輝石のことは気がかりでなりません。ですから、閣下のご提案を受け入れます」

アスベルしっかりしてんのな。成長してる。わあ涙出そう。
ヒューバートも来ることになった。ねぇ俺泣いていい?泣いていい?
めっちゃ嬉しいとりあえず今は自重しとくけど後で喜びの抱擁をしよう。ヒューバートと。無理やり。
ソフィが首を傾げた。

「ヒューバート、これからは一緒?」
「閣下のご命令ですから仕方ありません」

ヒューバート、ソフィにその手の嫌味は通用しない。

「一緒に行動するのにいささか不安がありますが……」
「不安?」
「ソフィはこの人たちといて苦労しませんでしたか?」

あっ地雷。

「苦労はしてないけど、ロックガガンに食べられたりした」
「それは一般的に苦労と言う」

ぼそっと呟いた。ソフィが聞いてないのは承知。

「食べられたって……」
「でも、お守りの中のコショウでロックガガンがくしゃみして外に出られたの」

ソフィそれは言わなくていいよ!

「あのお守りのおかげで助かった。ありがとう、ヒューバート」

アスベルもあっさり流さないように。
ヒューバートが眼鏡に手をやった。緩いなら調節すれば?

「偶然でしょう、それは……それにあれは元々、あなたがくれた物です。……いらなくなったから返しただけです。勘違いしないでください!」
「照れてるねー、弟くん」
「ある意味すごく素直だよねあいつ」
「そこ!うるさいですよ!」

パスカルとぼそぼそ言い合ってたらヒューバートに突っ込まれた。

「それでも俺は嬉しかったんだがな……まるでお前が助けてくれたようで」
「そういう甘い考え方は嫌いです。だからあなた方と行くのは不安なんですよ」

…ヒューバートって元々アスベル大好きだったけど、なんか落とされ直しそうで怖いな。

───忘れるなよ
───俺はお前の不安を食って力を増す
───制御しきれないなら、俺はお前に取って換わるからな

「…わかってるよ」

ヒューバートが潜入経路の相談を始めるのを横目に、俺はぽつりと呟いた。


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