疑問、疑念、猜疑心
「あいつ自分が王子だって自覚あるのかないのかはっきりした方がいいと思うよ!」
「走りながら怒鳴ると息切れるよー」
王都進軍の後ろの方にいたら、なんか途中で止まってる兵隊さんたちに会った。
王都の門が閉まってるから入れないとかで、そーいやここって王子見つけた地下道の出口あったよね、って行ってみたら。
「殿下から何か特別な指示を受けておいでですか?」
「はぇ?」
「どういう意味ですか?」
「先程殿下が少数の兵を連れてこの中へ、」
「何してんのかな王子!」
見張りぶっちぎって追っかけました。あのバカは!人のいるとこでバカって言わないくらいの分別はあるけど!
「つーかそーゆー仕事こそアスに頼むべきだと思うんだ!大将が本陣にいなかったら何か企んでんのバレバレじゃんかよ!」
「舌を噛むぞゆきみち」
「だいじょぶ慣れてる!」
慣れてどーすんだ。
途中にあったお墓に手を合わせて(ソフィの質問にもだいぶ慣れたなー…相変わらず答えるの大変だけど)、扉開けた先、に。
「リチャード!無事か!?」
「…ああ、来てくれたんだね、アスベル」
血みどろの真ん中に立つリチャード。
…怖ぇよ。
(…こいつは待ち伏せされたって言ってたけど)
ほんとは味方ごとリチャードがやったんじゃないか、とか。
…バカ言え、最低だな俺。そんな疑い方するとか、さっきのリチャードの中にどうこうって話引きずりすぎだし。
ふる、と首を振ったとき、リチャードががくんと膝をついた。
「…駄目だ…出て、来るな…!」
やめて。
俺にお前を疑う要素を与えるな。
「…っ王子、体調悪いなら戻った方がいい。俺もついてくからアスたちに任せよ?」
「…いや、大丈夫だ」
「大丈夫に見えないから言ってんだよ!」
怖い。何かはわかんないけどすごく怖い。全身が警報鳴らしてる。
「…セルディクは父の仇だ。何としても、僕がこの手で父の無念を晴らさなければならない」
「わざわざ子供に人殺ししてほしい親なんかいるかよ!」
「そう…僕の自己満足かもしれない。だが僕は、叔父をこのまま王にするつもりもない」
リチャードはどうしても先へ進むつもりらしかった。
先へ進むみんなの背中を見ながら、俺は唇を噛んだ。最近しょっちゅう噛んでるせいで血の味がした。
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