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乱心…?
北橋を上げて、鍵がいるからって中央塔に来た。

「誰もいないんかな?」
「北橋を上げたせいでみんな外に出たのかもしれない」

アスベルについてって階段を登った。

「王子ーこの上はー?」
「屋上だ。見張りがいないはずはないのだけど…」

鍵を取って上を見た王子の目が丸くなった。
アスベルの声が降る。

「リチャード!上だ!」

ざんっ、
上から降ってきた兵士の剣が王子の肩口から腹までざっくり裂いた。鎧にべったり血糊がつく。───嘘だろ?

「王子!」

引き金を引いた。血が止まらない。嫌なフラッシュバック。あのときだって間に合わなかった。

(荒垣さん…!)

ディアラマをかけ続ける。ちゃんと最大治癒使えないのはなんでだ。火炎も万能もなんだか使いにくいしイザナミのとこ行ったときより威力低い。やっぱテレビの中じゃないと駄目なのか。

(関係ない!王子助けるんだ!)

パスカルとソフィが兵士を押さえつけている。いやいいんだけどさ、ちょっとソフィこっち来させて!俺一人じゃ無理だし!

「くっそ完璧白眼剥いてやがる…王子、王子ってば!」
「ちょ、それってやばくない!?」
「限りなくやべぇよ!」
「リチャード!しっかりしてくれ!」

アスベルが王子の肩を揺らす。怪我人揺らすな、と言おうとして、王子の指先が床を撫でたことに気付いた。

「…意識戻った?」
「え?」

アスベルが手を離すと、俯せに倒れていた王子が体を起こした。

「ちょ、バカまだ寝てろ、傷ちゃんと塞がってないし血ぃ足りなくて貧血起こすぞ」
「……下衆が……」

ぼそりと呟いて、王子はゆらりと立ち上がった。

(…え?)

傷がない。
服の裂け目から覗くはずの塞がり切らない傷がない。血のついた肌は切れ目一つないように見える。
王子はぶつぶつ呟きながら剣を抜いた。…まさか、

「やめろバカ!」
「邪魔をするな!」

咄嗟に腕にすがったら思い切り振りほどかれた。いった腰打った…!

「リチャード!何をするんだ!」
「うるさい!」

肩に置かれたアスベルの手も払い落として、王子は兵士に向けて剣を振り上げた。

「邪魔するに決まってんだろ!」

俺は王子の向こうずねを思い切り蹴った。がくんと王子の膝が落ちる。

「ソフィ!そいつ逃がすな!気絶さして縛り上げといて!」

ソフィがこくりと頷いて兵士の方に向かうのを確認して、俺はどうにか立ち上がって王子の首をロックした。

「アスベル剣押さえて!」
「離せ!」
「離しませーんー!恨むなよ王子…!」

アスベルに手伝ってもらって王子を押さえつけ、王子のこめかみに召喚器を当てる。
引き金を引いても音は出なかった。

「…死んでない…よね?」

いきなりぐったりした王子を見てパスカルがそっと聞いてくる。
俺はふンと鼻を鳴らした。

「威力最少こめかみに当てないと意味ないスタンガンモード!一時間くらいしたら目ぇ覚ますよ」
「リチャード…どうしたんだ…」

床に王子を寝かせ直してアスベルが言う。

「うーん…いきなりばっさりやられてキレちゃった、とか?」
「傷治して礼の言葉もなく斬りかかるような奴か?」

ちら、と床の血溜まりを見る。…やなこと思い出してる場合じゃないな。
王子の傷はだいぶ深かった。正直ショック死してもおかしくなかったと思う。つーかこの出血量であんだけ動けるのがなんかちょっと…不自然。

「わかんないよー。案外怒ると周り見えなくなるタイプだったりして」
「リチャードはそんな奴じゃない」

アスベルが強い声で言った。自分に言いきかせてるみたく聞こえた。

「…とりあえず王子起きるまで俺が見てるから。アスベルたちは橋と門とよろしく」

落ちてた鍵を拾ってアスベルに渡す。それから兵士を気絶させたのはいいけど縄の扱いに困ってるソフィの救出に向かった。


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