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新調しました
グレルサイド到着。

「アスベル財布貸して」
「何か買うのか?」
「や、俺のコレって制服なんだよね。がっこの」

これ、と相変わらず着ていた八高の制服を見下ろす。帰ったらクリーニング決定だな、くそ。

「さすがにそろそろ着替えないと着てけなくなるし、でも俺相変わらず文無しだから建て替えて?グミとかついでに買ってくるし」
「別に構わないよ、それはみんなの共用だから。必要なら使ってくれていい」
「さんくすっ」

足りなそうなものを道具袋を覗いて確認して、先に屋敷に行くというみんなと別れた。

「デール公には話を通しておくよ。終わったら屋敷に来てくれ」
「あーい」

とりあえず先に服、ってことで店に入る。いい感じに古着屋っぽい。ラッキー。そういやこの時代って服はオーダーメイドが基本か?

深い緑のハイネック、白いベスト、アームカバーが赤い紐で緩く結んである。袖口にぐるりと赤い刺繍。ホルスターが白だから映えるように下は黒にした。
グミとか入れようと思ってついでにウエストポーチも買った。白いやつ。ベルト代わりに腰に巻いて、右脚にホルスターを付ける。完成。

「あんがとおばちゃん、ついでだけど道具屋どこ?」
「三軒隣だよ、まいど」

ここの物価よくわかんないから高いか安いかわかんないんだよな。モノはよさそうだからぼったくられてはないだろうけど。
グミとボトルと、それとは別に消毒用だったり血止めだったりを買って、いくつかはポーチの中に入れて屋敷に向かった。

「…わかってたけどでかいなちくしょう」

塀の横から見上げていると、窓のひとつからソフィが見えた。
ソフィが手を振るのに応えて、俺は正門に向かった。






俺がいない間にだいぶ話が進んで、ウォールブリッジに攻め込むことになってた。

「…戦争か」
「怖い?」

振り返るとパスカルがいた。神出鬼没。

「…まぁ、ね。人が死ぬのを見たことがないなんて言わないけど」

荒垣さんがそうだ。チドリがそうだった。ジンやタカヤとも結局戦ったし菜々子も一回心臓が止まった。
壁に置いた手を握る。

「…俺はああならない、俺はそうならない、俺はこの線を越えない」

殺すことに慣れたくなんかない。魔物はどうなんだとか言われると困るけどでもやっぱり人殺しは嫌だ。

「アスベルたちバカにするとかじゃなくて、俺は誰かを殺してそれに慣れちゃうようなやつになりたくない」

そうなった自分を認めたくない。
唇を噛むと肩に手を置かれた。

「うん、ゆきみちが決めたならあたしは止めない。
でもまぁ生き残るのが一番だけどね、死んじゃったらどうしようもないし」
「ん、大丈夫」

イカロスは誰かを生かすための力だから。
どうにか笑顔を作ると、パスカルはにかっと笑って部屋に戻って行った。

「つーか俺も寝なきゃ…ってどーかしたかソフィ」

反対側からソフィが来て、俯いていたから声をかけたらやたら必死に聞かれた。

「アスベルとリチャードは、ともだちだよね?」
「お、おう」
「リチャードは大丈夫なんだよね?アスベルにひどいこと、しないよね?」
「しないしないあのアスベル大好き人間が」

…マジうっかり薔薇に落ちないか心配なんだけどなあの二人。
愛と憎しみは表裏一体とか言うけど、王子がアスベルを本気で嫌いになるとか想像つかない。何が起きただよそれこそ。

「なんかあった?」
「…わからない。わからないの。でも、なんだかリチャードを見ていると、すごく不安になる…」

…なんだろうな…ちょっとした嫉妬、にしちゃなんか恐怖が勝ってるし。海辺で二人が反発したっぽいのと関係あんのかな…。

「…明日も大変だから。もう寝ろ」
「でも、」
「アスベル守るって決めたんだろ?…リチャードがひどいことしようとしたら止めりゃいいんだよ。友達にひどいことされそうになったってだけでアスベル泣くだろうし、その前に止めてやろうな」

俺も手伝う、と言って頭を撫でると、ちょっとまだ暗い顔で、それでもソフィは笑ってくれた。


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あきゅろす。
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