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ヒューバートとお話
夜。
よくわからないうちに黒服追い返して俺は屋敷の執務室に連れてかれて、ヒューバートが机に向かうのをぼへっと見ていた。

「ねぇヒュー」
「…………」

へんじがない。ただのしかばねの…やめよう虚しい。
つか連れて来といてシカトとか何。いいもんヒューバートがどんだけ男前になったか観察してやるから。

横顔はずいぶん凛々しくなった。まんまるな顔してたのにな。それでもまだ少年の域は抜けない。
眼鏡の奥のアスベルとお揃の青い目は、すぐ横の椅子にいるせいでよく見えた。切れ長のつり目がちょっときつい。細める癖ついたのかな。視力落ちたなら仕方ないかもだけど。
姿勢はいい。俺よりよっぽど。背も伸びてる。…抜かされてないよな俺。肩幅はあるけどなんか手足細い。コドモからオトナへの変化途中ってやつね。
…いやぁもう。

ヒューバートが溜め息吐いてペンを置いた。

「…人の顔を見ているのはそんなに楽しいですか」
「んー?や、いい男になったなぁと思って」

ちょっとあれだ、父親ってこんな感じかな。ほら俺ちっさいヒューバート見たからさ、むしろ十時間くらい前までは一緒でした。あれがこうなったと思うとちょっと感動。マジかっけぇもん。そんな派手な美形じゃないけどさ。

「やーもーこれ親父さんぜってー自慢だろーよ。アスもけっこーイイ感じだし?」

あいつはかっこいいって段階じゃないかもだけどな。弟がコレなのに兄貴が可愛がられるタイプってのもどうかと思うけど、まぁアスベルだし。
けとけと笑う俺から目線外してヒューバートは眼鏡に手をやった。

「ラント侯は亡くなりました。最近あったフェンデルとの国境紛争の際に戦死したそうです」

…マジかー。
俺はかりかり頭をかいた。どーりで親父さん執務室にいないわけね。おかしいなーとは思ってたんだけど、そうかーそう来るかー…。

「結局、何考えてるかわかんないまんまだったなぁ」

アスベル頑固だし、きっと今でもギスってただろうな。ちゃんと話したらどうにかなったかもなのに。つか俺が何考えてるのか知りたかったなぁ。

「…いい加減にして下さい」

俺の正面に立ったヒューバートは、ちょうど明かりを背にしてて顔がよく見えなかった。

「どうしても、あなたは自分がゆきみちたくとだとおっしゃいたいようですね」
「…は?」
「確かに容姿、声、性格、記憶に至るまでぼくの記憶にあるゆきみちたくとに瓜二つ、ですがあなたは少しやりすぎた。
何せ本物のゆきみちたくとは、七年前に死亡しているはずですからね」

今こいつ聞き捨てならないこと言った。
七年。
七年だってさ。

「…そりゃ死んだことにされるだろうよ…」

額に手を当てる。でかくなるわけな。今ここにいるってことは聖堂のアレからはちゃんと逃げたか倒したかしたんだろうけど。
こいつらだけに任せて。逃げたも同然。
恨むぜちくしょう。
どこの誰だ、あんなタイミングで時間移動なんて半端なことしてくれた奴は。

「あなたは一体何者ですか。正直に答えない場合、相応の覚悟はしていただきます」

上からヒューバートの冷たい声。うんまぁ兄貴がああだし、性格こんなじゃないとやってけないよな。

「…ねぇヒュー、お前のその常識的なところは俺の大好きなところのひとつではあるんだけどさ、ちょっと今それ置いといてくれないかな」
「…まだ言いますか」
「言うよ。信じて。俺はゆきみちたくとだ」

召喚器を取り出す。ヒューバートは身構えたけど、それを自分のこめかみに当てた俺に目を丸くした。
見せたよな、あの聖堂の地下、コウモリを倒すのにイカロスを呼んで、初めて見たお前とシェリアが腰抜かしてた。呼ぶ方法とイカロス、両方。

「証拠見せてやる」

引き金を引く。
ぱりん、
イカロスは俺の倍くらい背丈あるから、執務室じゃちょっと狭くて膝を抱えていた。

「忘れたなんて言わせない。イカロスを扱えるのは俺一人だよ、ヒュー」

…すごく関係ないけど、巻き込んでびびらせたメイドさんごめんなさい。






「…すごく今更なんだけどさー」
「何ですか」
「…なぜにあのタイミングで移動したし自分…!」

あの後ソフィがアレと相討ちしただー?しかもヒューバートの目が覚め次第ストラタに養子に出されただー?アスベルは騎士学校行っちゃってて親父さんの死に水も取れなかっただー?

「でもいなかったっけソフィ」
「だから謎なんですよ、彼女もまた七年前と変わらない姿で、しかも記憶を無くしている。
まぁ彼女までソフィだと考えるのは早計だと思いますが」

無理やり俺がゆきみちたくとだと納得させた後、ヒューバートは請われるまま七年間のことを話してくれた。想定外すぎたんだろうな、イカロスインパクトあるし。三割は狙ったけど。
…予想以上に重かったです。想定外です。逆に俺が泣きたい。

「あーでもヒューのスレっぷりとシェリアの暗い顔は納得だわー。そんだけ色々ありゃ当然だわな」

アスベルは相変わらず…でもないか。あー俺前に「でかいこと起こらないと性格変わんないなー」みたいなこと考えた。起きましたねー…だいぶ悲劇がー…。

「…んああんもう無理俺疲れた。寝る。また明日なヒューバート」

イカロス戻して執務室を出た。ヒューバートは眼鏡を押し上げただけだったけど、おやすみって言ったら頷いてくれたからよし。
キャパ超えしました。もー無理。いろいろありすぎ…だいたい俺にしてみれば聖堂の地下行く前に仮眠取っただけなんだからね。体のサイクル的にも寝ないと死ぬよ頭痛とか胃もたれ的な意味で。
フレデリックさんが部屋を用意してくれていた。もうマジ執事の鑑!今日は眠いから無理だけど明日起きたら拍手しよう。


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あきゅろす。
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