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胎児のポーズは生き物共通
ラムダがぼそりと呟いた。

<……少し長く話し過ぎたようだ>

ラムダ?

<それとも……もう限界が近いのか……>

待て、待てよなんだそれ、ていうか考えたことなかったけど他人の体の中に入るってラムダの方に負担はかかんないのか!?

<アスベル……我は少し、眠らせてもらうぞ>
<ラムダ……!>

眠る、だけで済むんだろうなほんとに! お前アスベルにここまでやらせといて消えるとかナシだかんな!

<ラムダの光が小さくなっていく……まさか、消えるつもりなのか!?
 ラムダ、消えるな!
 この世界には、お前の知らない素晴らしいことがまだまだあるんだ!
 消えることですべてを終わらせようなんて間違ってる!
 お前は知るべきだ! 知らなければいけないんだ!

 ラムダ!
 生きるんだ!>

コーネルさんと同じセリフだ。それを最後に、二人の会話は聞こえなくなった。

「あれ……? 何も聞こえなくなっちゃった」
「ラムダは……消えたのか?」

そうだったら俺あいつ一生許さない。沈黙が降りる。時間の経つのがやたら遅い。

「う……」

ぴくりともしなかったアスベルがかすかに身じろいだ。

「アスベル!」
「兄さん!」
「アスっ!」

アスベルを囲っていた誰一人、それを見逃さなかった。あまりの揃いっぷりにイカロスが「笑っていい?」と呟いた。いいわけあるか。
かすかに唸りながらアスベルが瞬く。───目が。
王子のときも左目が赤かった。これは、ソフィの髪の色だ。日に透ける青色が、透明度はそのままで少しだけ赤を混ぜた色になった。
成功、だ。

「みんな……」

ぐるり、とアスベルが周りを見回した。それでみんなにも目の色のことは知れただろうけど、アスベルがちゃんと起きたことの方が重要なのでみんな喜んだ。俺は一歩引いて泣いていた。声出さないように泣くのって技術いるんだぞこの野郎。
アスベルが少ししんどそうに体を起こした。すぐさまシェリアが手を添える。

「アスベルとラムダが話してるの、あたしたちにも聞こえてたよ。ラムダは……消えちゃったの?」

変な話だ。ここに来たときはみんなラムダを消す方法について考えてたのに、今じゃ消えてないかどうか心配してる。ちょっと複雑だ。
ソフィがアスベルの手をとって、自分の額にあてた。

「ソフィ……? 何を……」
「……違う。今までみたいな反応じゃないの」
「それじゃ……ラムダは消えたの?」

シェリアのセリフに、ソフィがこてんと首を傾げる。なにあれかわいい。

「これは……それとは違う気がする。このラムダは……消せない。消す必要がないラムダ……」

───なにそのご都合主義

「イカロスうるさい」

いいんだよソフィが消えないなら! あとラムダがまだいるなら!

「どういうことなのだろうな?」
「ラムダは……少し眠ると言っていた。少し眠らせてもらうと」

パスカルのはしゃいだ声が響いた。

「じゃあもうソフィが自分を犠牲にする必要はなくなったってこと?」
「ああ」

アスベルが頷くと、ソフィが今までにないくらいふやけた顔で微笑んだ。僅かに上気した顔にイカロスがまた疑問符浮かべてるけどどうでもいい。あああかわいいマジかわいいよかったあああああ。
喜び合う面々の中心で、アスベルが立ち上がる。思ったよりふらつかずに立って、みんなを見回した。促されるようにみんな立ち上がる。
背景は結局そこに在り続ける星の核だ。くそうどうせ写メ撮ろうとしても逆光でうまく撮れないんだろ! やだもうもったいない! 永久保存したい! あと自慢したい!

「帰ろう。
俺たちの帰るべき場所へ」

みんなが頷いた。一人の例外もなかった。
隅の方でこくこく頷きながら、泣きやむまで待ってくれないかなあとちょっと思った。


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