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討論苦手
「アス!」

アスベルは意識を失った王子を抱えたまま黒い渦を見上げていた。髪も肌も元の色に戻った王子は、とりあえず見た目外傷はない。

「無事? 怪我は? 変なとこない?」
「ああ。……リチャードを頼めるか」
「ラジャ」

まだ待機中だったイカロスに片側支えてもらって端の方に移動した。ゆっくり王子を床に下ろしてイカロス先生の指示を仰ぐ。

「ど? 大丈夫?」
『怪我はしてない。精神性のがキツいかな……まぁここじゃどうにもなんねぇ、ラムダボコってとっとと医者に診せるのが一番いいだろ』

行くぜ、とイカロスがラムダを指したとき、丁度ラムダが口をきいた。

 全てが終わる……?
 我を倒したら、次は何と争う?
 争う相手が見つからねば、自ら作り出すか?

いっっっらー。
HAHAHA、これ系の問答は飽きたっつってんのにどんだけ人の話聞かないのよラムダ。
口に出してないだろ、というイカロスの突っ込みは聞こえないふりでアスベルの隣りに立つ。

 人間はいつもそうだ。存在していくために他を犠牲にし続ける。その必要のないものまで争いに巻き込み、悪として滅ぼす。それがいかに無知で驕った考えか、わかろうともしない。

「お前がそれを知ってるって言うなら今お前がやってることは何なわけ。自分勝手な正義を振りかざすって意味なら俺からすればお前も十分その資格があるよ」

ああくそこれ始めると観念論になるから嫌なんだけどなー止めないといつまでも語るんだよなー俺もだけどね!

 人間は存在するだけでこの星の全ての害となる。滅ぼされるべき存在なのだ。

「俺も聞いた話なんだけどね。こういう説がある。神様はこの星にとっくに飽きて、人間を使って星を壊そうとしてるって話だ。つまり害になることがアイデンティティだからそれを害悪とすることそのものが間違ってるって話」

肯定するの悲しすぎるから俺賛成しないけどね、と続けた俺の後方がやたらうるさかった。いやあくまで一説だしね。

 ……それで、貴様は自らの存在すら否定して、この星を滅ぼそうというのか?

「賛成しねぇっつってんだろが話聞け。例えそうだとしても俺はこいつらがけっこう好きだし、星がなくなるのイヤだからそれなりの努力はするつもりだよ?」

 だが現に、人間は変わらず争い、奪い、虐げ、自らを省みることすらない。存在する意味のない存在を、このままにする道理があるか?

「あるよ。ていうかお前がそれを言う資格がないよ。今まさに星を滅ぼしかかってるのは自分だって自覚あるか?」
『おいコラいつまで問答続ける気だてめえら』

ああっそろそろ俺の言語スキルに限界がっ、てとこでイカロスに割って入ってもらった。あーボロ出るところした。


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