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そろそろ飽きた
「こんな汚れた世界……僕たちに優しくない世界など、作り変えてしまえばいいんだ」

優しくない世界の反対は冷たくない世界か? 舌打ちでもしようかと思ったけどアスベルが反論始めたから黙った。

「お前の言う理想の世界とはどんな所だ? こんなことをして実現するものなのか?」
「……僕たちが世界そのものになれば、醜い争いの元凶を地上から消し去ることができる」

暗喩の対象は人間全体か? ……あーもーやだやだこういう話俺何回聞かされなきゃなんないんだろ。
殺さなきゃいられない人がいる。生命の危機とか本能レベルの生理欲求とか。後者はすごく否定したいけどな。
助けずにはいられない人がいる。偽善にしろ偶然にしろ、俺を含めた大勢が助けられてきた。
十把一絡げで種族一つ理解した気になんなっつの。俺もだけど。

「人間を滅ぼすことで争いをなくす……? そうしたらお前はどうなるんだ? たった一人になって、それからどうするって言うんだ!」

正確には二人ですと突っ込みたくてたまんなかった。我慢したけど。

「そんなやり方で争いの元を断とうなんて間違ってる……。
故郷を追われた時、お前は俺に手を差し伸べてくれたな。それが俺にはとても嬉しかった。リチャード、お前ならこんなことをしなくても、その優しさで争いをなくせるはずだ」
「黙れ!」

空気が震えた。おお迫力。でも俺大声出す奴そんな怖くないんだよね。ほんとに怖い奴は黙ってるときが一番怖いからな……。
て、なんか地面まで揺れてますけど。

「ものすごい気が発散している。これは……原素の力か?」

物理的になんかあんのかよ……イヤなスキル抱えたもんだぜまったく。つか王子大丈夫なのかね。

「これでわかっただろう? 今の我がいかに圧倒的な存在であるかを」
「どこが?」

あっ一人称「我」になった。人格交代スムーズだねお前ら。
今のセリフ? 俺ですがなにか?
ざっ、といっぺんに俺に目が集まった。含む王子(ラムダ)の不機嫌な目。

「……なんだと?」
「ふざけろ俺はイザナミの嫉妬と稲羽の魔王の『死んでくれる?』のが怖い」

ふん、と鼻を鳴らすと「偉そうに言うことかしら」という声が聞こえた。無視。

「圧倒的? 何が? どこが? 王子が幼少期で精神年齢止まってんのはいいけどお前今いくつよラムダ。千歳? 二千歳?」

見つかったのは千年前としてもその前から生きてたわけだしな。

「ガキにもほどがあるだろ。言っとくけど俺お前のこと千年前のヒューマノイドビジュアル以外で認識する気失せたから。完ッ璧」
「何が言いたい」
「俺の言うことなんて今も昔も同じだよ、王子。
手を伸ばせ。その手を取ってやるから」

返礼は原素の剣だった。どうでもいいことは喋るのにそこで言葉惜しむなよ大事だぞ。
ついでに俺、振り払われるのとか慣れっこだからこれっくらいじゃ諦めないよ?


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あきゅろす。
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