未来は口を開けて待っている
「……イカロス?」
───なんだよ
領主館にて、もらった個室のベッドに転がりながらクローゼットを見る。そこには八十神高校の制服が、丁寧に汚れを落とされてかけられていた。
「気付いてるだろ?」
───俺はお前が知ってることを知ってるだけだ
「じゃあ知ってるだろ? ───俺が、もうあんまりこの世界にいられないこと」
返ってきたのは沈黙だった。
「ゲームの中の世界ではよくて決戦後数ヶ月。その後の話は、ソフトの中に入ってない」
その後俺はどうなるのか、どこかの世界にあるはずのエフィネアで暮らすのか、それとも最初からやり直しか、はたまたどこでもない空間に放り出されるか。
「先が見えないってのは不安だな……」
───眠らなければ、決戦が先送りになるとでも思うのか?
「体感時間が伸びるのは確かだろ。まぁ、でも」
目を閉じて笑う。止める気はない、今更。
「俺っていう存在がなくなるとして。最後まで一緒だろ、イカロス」
───俺はお前だ
───同一だから離れられない
「うん……ありがとね。おやすみ」
意外と早く意識が飛んで、イカロスが何か言ったような気がしたけど意味はわからなかった。
おい、まだか。
あれの望みは終幕の見物だ、まだ戻せぬ。
絶望することを無意識に避けて自分を客観視し始めてる。今に限界が来るぞ。
私は私の愛し子の望みを叶えただけ。お前も分かっているのだろう?
……くそ……早く、早く、あいつが壊れる前に、終わってくれ……!
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