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領主館執務室
うつらうつら微睡んでいると、扉が叩かれている音で目が覚めた。

───ゆきみち、いい?
「んん……なに」
───そろそろ再開しましょう。あなたも執務室に来てね
「……おう……今行く」

寝てたのか。気楽なもんだ。
シェリアの足音が遠ざかるのをなんとなく聞いて、それから体を起こした。
つーか再開て。終わったら呼べって言わなかったか俺。
やれやれと溜め息を吐いて、俺は立ち上がった。






「よし、全員揃ったな」

そう言って始まった会議はあまり明るいものではなかった。
それでもリチャードを諦める、という選択肢が出ないあたりが流石は世界救済組だ。つーかリチャードが自害するとかの選択肢はないのか?
俺は一人窓の側に立って外を眺めていた。とっくに日は落ちて、見えるのはぽつぽつと光る民家の明かりと後方の会議の様子だけ。

「今まではリチャード本人がやったことなのかもって思ってたから、あんまり本気になれなかったけど……」

パスカルがひょい、と机から降りるのが鏡になった窓に写った。ていうか俺はだいぶ本気だったんだけど。

「エメロードがラムダを取り込んだとき、ラムダはリチャードから離れたよね? またリチャードからラムダを引き離す事ができれば……」
「陛下を助ける事もできるって事……?」
「可能性はあると思うよ」

基本方針はそんなとこだろ。引き離すこと自体は不可能じゃないわけだし。
そして最悪の事態をわざわざ口にする教官に拍手。汚れ役ご苦労さま。

「あのね、みんな」

だいぶ落ち着いたらしいソフィの、いつも通りよく通る声が響いた。

「出撃の前に、ひとつやっておかないといけないことがあるの」

とりあえずひとついいか、出撃ってお前。

「星の核を目指すというのは、ラムダの中に入るのと同じ事。このままだとラムダの精神から干渉を受ける可能性がある。だから準備をしないといけない」

……さりげ一緒に行っていいとか言われたよな今。ええーさっきまでのキレっぷりなんだったの。

「難しいことじゃない。今からみんなで、あの花畑に行けばいい」
「花畑って、私たちが最初に出会った、あの?」
「花畑へ行きましょう。事前にできるだけの準備はしておきたいですから」

どういう準備をするのかについての説明はひとつも受けてねぇんだが。

「そうね。このままみんなで一緒に行きましょう」

全員が立ち上がって、俺はひとつ溜め息をついた。































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あきゅろす。
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