拒否られたようです
貴様のごとき存在が……
「今の声は……?」
そう言ったのが誰かもわからなかった。
聞いた途端に総毛立った。アレは、ヤバい。
我の力を……手にできると思うのか!
声は確かにエメロードさんの口から出てるけど、あのうろたえ方からして本人の意思じゃない。
『ラムダか』
「王子ボイスで慣れてるから違和感……」
『軽口叩けるなら大丈夫だな。どうする』
「エメロードさんだけ回収できる?」
『やってみる』
ぼそぼそと会話してた空間を悲鳴が貫いた。
「う……うおおおおお!」
もうちょいお淑やかな悲鳴上げません? って無理か。
「馬鹿な……こんなはずでは!
ぎゃあああああ!」
ばちばち電撃を帯びだした黒い渦の中でエメロードさんが苦しんでいる。いい気味、と言い切れるほど俺は合理的にできてない。
「何が起こっているんだ!?」
ヒューバートが思わず敬語を外して叫ぶ。
「拒絶反応……?」
ヒューマノイドでは、大輝石三つ分の原素を抱えたラムダには耐えられないか。……ってそれあの人死ぬじゃん!
「イカロス!」
『ちッ……召喚器寄越せ! 多少痛いのは我慢しろよ!』
「死ぬよりマシだね!」
黒い渦の方に召喚器を投げる。ぱしっとそれを受け取って顕現したイカロスは、勢いのまま渦に突っ込んだ。
『つ……ッ』
「くぁッ」
イカロスはどこまで行っても俺の影で、ある程度の感覚は共有だからイカロスが痛いと俺も痛い。何割かは削られるはずの痛みは声が上がるくらいには強烈で、本来一回攻撃受けると実体化が解ける人型のイカロスにはちょっとキツいはずだ。
それでも無理してもらわなきゃならない。俺あの人いっぺん殴らなきゃ気が済まないし。
『…っ…届、けっ!』
腕一本、無理やり通したイカロスが召喚器のトリガーを引く。銃口はエメロードさんのこめかみに当てられているはずだ。
一瞬悲鳴が途切れてエメロードさんの姿がぐんにゃりと曲がって見えた。
光が納まった後、床には銀色に光る銃がひとつ転がっていた。
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