なかなか終わらないです
倒れたのはリチャードだった。
宙に黒いぐるぐるが浮かんでいて、柱だかなんだかにもたれていたのは最後にちゃんと見たときのままのリチャードだった。
「リチャード!」
その側に駆け出そうとしたアスベルをソフィが止めた。
はい自爆フラグ継続中ー。どうやって止めよう。
「……これがわたしの……わたしの、使命」
渦の中にぼんやりと人の形をつくりかけるラムダに、ソフィが近付いていく。
あー……これはアレだな、イカロスに強制的にひっさらわせるとかやった方がいい感じかな。
「イカロス、準備」
───……
「イカロス?」
黙ったままのイカロスが意識を向けてる方を見ると、……いつの間に移動してんですかエメロードさん。
「何をするんだソフィ!?」
「みんな……さよなら。
ラムダを消して、わたしも……消える!」
光るソフィを後ろっから抱えて引き戻す。
勢い余って倒れた俺とソフィの鼻先を緑がかったような雷が掠めていった。
「……っにしやがんだ!」
俺が吠えるのと同時に、人型をとったイカロスがエメロードさんの背後に現れて見事な縦ロールの頭を景気よく蹴り飛ばした。
「エメロード!?」
床に膝をついてエメロードさんがイカロスを睨む。俺の後ろからパスカルの声が飛ぶ間も二人分の金色の瞳がばちばちと火花を飛ばしていた。
さっきの雷がエメロードさんの手から出ていたことは全員が見ている。
『……それで? 遺言は?』
イカロスが絶対零度の瞳でエメロードさんを見ながら言った。死ぬのは確定なのかよ。
エメロードさんがにぃと笑う。
「……ふふ……流石に、あなたが邪魔に入るとは思いませんでした」
『俺はゆきみちが弱っちい代わりに生まれた切り札だからな。切り札の条件は有用性と機密性だろ』
持っていることすら知られてはならない。ペルソナという概念が始めからないこの世界では、イカロスの存在そのものが切り札になるから。
『言いたいことはそれで終わり?』
イカロスの掲げた手に炎が灯る。完璧殺る気だー。しかもアレアギ顕現させてるくせにメギドラオンで止め刺す気だよ。
「恩人に随分な扱いをしますね」
『ソフィに手ェ出した時点で釣りが来る』
「おや、ラムダとプロトス1の対消滅を止めるため、と言ってもですか?」
『あ?』
イカロスが不機嫌に眉を潜めるのとほぼ同時、ソフィがまだ俺に抱えられながら叫んだ。
「どうして止めるの……わたしの命と引き換えにラムダを完全に消滅させる。その機能をつけたのはエメロードなのに!」
泣き出しそうなセリフに何も言えなかった。
相変わらず大事なときに何も言えない自分が心底嫌になった。
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