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これで、おしまい
突然単調になったリチャードの攻撃は避けやすいけど威力が上がっていた。

『卑怯者卑怯者卑怯者! 他人の体を借りなきゃ存在すら危ういくせに神様気取りとは笑える! 他人を騙くらかして裏切って傷つけて、お前のやってることはお前の大嫌いな人間と一緒だよ!』
「や、あの、イカロスそろそろやめたげて」

絶好調でリチャード(ラムダ)を罵るイカロスの勢いは、アスベルたちが目線を逸らすほどになっても止まらない。なんか申し訳なくなってきたんだけど。
イカロスのセリフは痛いところを的確に突いてるらしく、リチャード(ラムダ)はさっきからイカロスと俺ばかり狙っている。

『寂しがりの化け物は一人きりの王子様に拾われてでも勇者様に殺されました、と。絵本にしたら売れるんじゃねぇの? 良かったなぁ世の中のガキどもに同情してもらえて!』
「黙れ!」

がつん、リチャードの拳が床を叩いて、ちゃんと避けたけど風圧に押されてたたらを踏んだ。

「ちょ、イカロスいい加減よせって」
『えーやだ楽しい』
「黙れどS!」

まったくこいつは、溜め息を吐いてイカロスの口を封じるついでに指示を出す。優先順位がおかしい? 知ってる!

「イカロス、アギラオ五連。教官とパスカルが詠唱してるから牽制兼足止めで時間差」
『都合良く使ってくれるよな』

にぃ、と嘲笑以外の何物でもない声で笑うくせに、イカロスは俺に逆らわない。

「とりあえずひとつめ!」

ぼんっ、と鼻先で弾けた炎に一瞬リチャードが怯む。その隙を突いてソフィがリチャードを蹴り飛ばした。

「人形風情が…ッ」

空を掻いた羽がソフィの肩を引っかけて、バランス崩れて二撃が入れられなかったソフィは追撃食らわないうちに飛び離れた。

「マークリバース!」

置き土産つきで。

「わー容赦ねぇ……イカロス、ふたつめ!」

ソフィの方に踏み出しかけた左足、その着地点で弾けるように発動する。と、足元に光の陣が敷かれて、味方識別ついてるとはいえ視覚的に怖いのですぐさま範囲外へ下がった。

「フラッシュティア!」

床に敷かれた十字が苛烈な裁きの意味を持って、つまりは下方からのハマとかメギドとかそんな感じだ。こっちのスキルは視覚的に派手だなー、いやペルソナのスキルもたいがいだけどね、開けの明星とかゴッドハンドとかハルマゲドンとか。

「いやハルマゲドンは別格ってか別次元ってか別世界ってかむしろリーダーオンリーだけど。みっつめ! 行ったぞヒュー!」

ぼんっ、と弾けた炎はリチャードに当たらなかった。わざと外したらしい。避けた方向にはたまたまヒューバートがいて、くいっと眼鏡を押し上げたのが見えた。

「分かっています。───クラックビースト!」

わ、とっくの昔に詠唱終わってた。
追尾性のある氷の獣がその牙でもってリチャードの羽の一枚(一本かな)を砕いた。痛覚はないっぽいけどこう来るとは思わなかったらしくて一瞬隙ができる。

「はいはい油断大敵ー! よっつめ!」
『むしろ牽制いらなかったのと違う?』
「それ言わない約束だから。いつつめ!」

申し訳ないけどその隙を衝いて二撃ほど入れさせてもらった。リチャードが膝をつく。うんうんそこ動くなよ、今教官とパスカルの詠唱終わったから。

「レ・ディスラプション!」
「ブラドフランム!」

超重量の岩壁が二枚、叩きつけられてリチャードが叫び声を上げる。いつの間に呼べるようになったらしいパスカルの炎の巨人が、岩に挟まれて動けないリチャードを焼いた。

「………あー気分悪い」
『何を今更、自分だってさんざ焼き殺す指示出しといて』
「殺せまで言ってねぇし。ヤなもんはヤなんだって、俺の言えたセリフでなかろうと」

何が悲しくてダチいじめせなならんのだ。俺もエメロードさんの真似してラムダが全部悪いんだぜ説掲げるか? や、しないけどさ。
さてお膳立ては整った。後は頼むぜ?
かつん、輝術の余韻が消えていやに静かな空間に、アスベルの靴音が響く。

「───これで、終わりだ!」
「人間風情が……ッ!」

走り込むアスベル、膝をついていたリチャードはあの原素の大剣を現して迎え撃った。



二人が交錯したとき、エメロードさんが笑うのをイカロスは見たという。


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あきゅろす。
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