軽くピンチです
さてラスボスことリチャードかっこラムダ憑依体、みたいな感じで戦闘が始まった。除くエメロードさん、シャトルに置いてくるべきだったか。危ない。
リチャードの背中には羽っぽいものがついてるけど、もっぱら回転攻撃用らしい。一回標的にされてどうにか避けて青ざめた。抉れたぞ床。どんだけ硬いの。
例によって大輝石の原素はまだ体内だしあの黒いもや的な何かは健在だしでなかなか厳しい。辛うじて徒歩と肉弾戦中心なのがありがたいかな、って、
「アス！」
ちょっと目を離した隙にリチャードがアスベルの後ろに回って、やたらでかい剣でもってアスベルを貫いた。アスベルの白い服が、赤く染まる。
どっから出したってか原素固めた感じかな、とりあえず明らかにバランスの悪い大きさの大剣を振りかぶって、リチャードはアスベルにとどめを刺そうとした。
「……てめえたいがいにしろよ……！」
空中のソフィが放った光がリチャード(まぁラムダですけど)の右腕を貫いてリチャードが大剣を取り落とす。すごくどうでもいいがあの大きさのものを振り回すのは大変だと思うんだけどどういう腕力してるんだ。
牽制代わりに何発か俺も撃って、リチャードがソフィを構ってる間にアスベルに駆け寄った。アスベルの目が薄く開く。血を吐いたらしくて目元まで赤い色が飛んでいた。
(似合わねーの)
普段着のせいかどうかは知らないが、アスベルには赤はあまり似合わないように思う。
「リザレクション……！」
ぼうっ、と地面が青く輝いて、そこに金色の魔法陣が敷かれた。シェリアの声が涙に滲んでいるような気がしたけど、アスベルの側に膝をついた状態だと教官の影になってよく見えない。
「アスは俺が見るから！ シェリアはソフィとヒューのサポート頼む！」
「……わかった、アスベルをお願い……！」
丁度パスカルが炎の巨人を呼んだところでよく聞こえなかったけど、とりあえずシェリアは本格的に泣きそうらしい。まぁアレはショックだ。うっかり攻撃食らったアスベルは後で殴る。
……ラムダ？ どっちにしろリンチは確定ですが何か？ 命賭けられるくらいの親友に殺し合いさせるとかどんだけ鬼だお前。
「イカロス、ディアラハン」
さっきのシェリアの範囲回復でライフボトル一本手前からは回復してるけど、元々の傷の深さといっぺんに失った血液量の関係でまだアスベルは立てそうにない。前衛二人後衛四人……バランス悪ぃな、おい。
少しでも楽になればとアスベルに癒しの光を降らせて、振り返りかけたところで悲鳴が聞こえた。
「───あああぁぁぁぁあああぁぁッ！」
「ヒューバート！」
二人分。ヒューバートとシェリア。シェリアの悲鳴はすっかり涙で濡れている。
───現実逃避してる場合か！
───早く呼べ、ヒューバートが間に合わない！
「かッてる…！」
体の全面をあの羽で抉られたらしいヒューバートが、双剣を取り落としてがくりと膝をついた。
更に拳を落とそうと引かれたリチャードの腕が、くんっと止まった。
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