続きを諦めるな ビアスは動かなくなった。慌てて脈測ったけどちゃんと生きてた。気絶したっぽい。いちおディアかけとっか。 「…イカロス」 見上げて名前を呼ぶ。俺の力、俺を守る鎧。 助けたいけど死にたくない殺したくない、そんな利己的なヒロイズムを読み取った魔法スキル一辺倒、それから中途半端に高い回復スキル。 赤毛の少年。ギリシアの一枚布の服をベルトで止めて、金メッキの火の玉型の仮面、片手に白い羽一枚、片手に骨組みの見えた未完成の翼。 イカロスは神話の昔、羽を作って飛べるようになったのに、近寄り過ぎた太陽に焼かれて死んだという。 「…それは非日常に近寄りたくてでも恐がって近寄れなかった俺の、力を得られて慢心しかけた俺の未来だった」 そうだろう、何より俺に近い俺の闇に近い俺の鎧。 イカロスはひとつ頷いて、すっと降りてくると俺に溶けて消えた。 でもちゃんと俺の中に暖かい灯りを灯した。 「…来てくれてありがとうな」 呟いて、さて王子どうなったかなと振り返りかけたときアスベルが叫んだ。 「危ないリチャード! その先は崖だ!」 「何してんの王子ー!」 無論ダッシュ。けっこ高さあるぜここ!こんなとこで妙な死亡フラグ立てんなよ! 崖の端っこに見えてたアスベルとソフィが消えた。 落ち、た? 「…うそだろ」 足に力入らなくてへたり込んだ。くっそ動け動け動け!諦めてたまるかよ、こんな終わりでいいわけない…! 自分も落ちそうになりながら覗いた崖の下で三人が倒れていた。動か、ない、ちくしょう…! 俺は下に降りる道探して走り出した。…後から考えると、ここで誰か呼べばよかったよね俺。馬鹿。 [←][→] |