猫の目になりたい ガルフに似せた金色のライオンを作ってもらってから、俺は風雅の知り合いのお店の常連だ。 「で、バイト先のセンパイの誕生日近いんでつきあいやがれ」 「…俺これから補修」 「何の」 「えーご」 「そりゃお前テスト点悪いくせにがっこ来ないから」 仕方ないから一人で行くことにして、風雅とは廊下で別れた。 ストラップについたライオンを携帯ごと空に掲げて、俺はくすくすと一人笑った。 「キモっ、歩きながら笑うとかキモっ!」 「殺す!」 途中で会った同級生はニ三発殴っておいた。うっかり目尻あたり引っ掛かれた。痛い。 ねこのめいし。 やたらかわいらしい字で書かれたポップは店主の妹さん作だそうだ。焦ったー二十歳越え男性(自営業)の書くかわいらしさじゃねぇよ、形と色的な意味で。 ねこのめいし。英語に直すとキャッツアイ。爪くらいの玉をひとつつまんでみる。 真ん中の線が確かに縦長の瞳孔に見えた。天井に吊ってある裸電球に透かしてみたけど眩しいから止めた。 ねこのめいし。猫は魔除けになるとかならないとか。宝石の効力とか、聞いた気がするけど覚えてない。 やたら安い(入手ルートが激しく不安だが風雅の「法律は引っ掛かってないよー」を信用する)それを二つ拾い上げて店主の方に向かった。 そのふたつをペンダントにしてもらって(トップが籠みたくなってるやつにひとつずつ放り込んで口をちゃっちゃと溶接して終わった、壊れたら直してもらえるかな)店を出た。 ひとつはポチ袋みたいのに入れてリボンかけてもらって、もうひとつは丸ままポケットに放り込んだ。 ねこのめいし。魔除けの宝石。 できたら役に立ちたいけど邪魔になるだけなら、近寄らない方がいっそあいつのためなんだろうけど。 猫の目になりたい せめてこのちっぽけな石があいつが抱えたがる闇を払ってくれるように。 (ちなみにセンパイが猫アレルギーなのを思い出して即店にとんぼ返りした) お題:にやり/nearly |