めらめらに赤い。
「本好き?」
「ん」
心持ち楽しそうに白里は言った。まぁ半分くらい聞いてないんだろうけど、重そうなハードカバー抱えてページめくってるし。
そのまま備え付けの椅子の方に歩きだす白里に、俺は肩をすくめた。
傾くのが早い太陽はとっくに薄めた炎色で、窓の桟ではぎりぎり隠れない位置にいるから白里は窓に背を向けた椅子を選んで座った。
そうしてページをめくっていく白里は本気で楽しそうで、俺は少し悔しかったりする。
(うんまぁ、なんていうか頑張れ俺)
自分にそう言いきかせ、俺は本棚の林(森、と言えるほどの規模はない)に紛れた。
かろんかろん、時々音の抜けるチャイムが鳴る。
「へーかんでーす」
カウンターで何か書いていた女子生徒が、そう広くもない図書室に響く程度の声で言った。このがっこ図書室閉まるの早いし。六時くらいまで開けとけよ。
「って思わない?」
「すごく思う」
白里が多少不満気に言った。いや白里、HR終わって五分後に来たとしても、その厚さの本を読み切るのは無茶だ。
「うるさいっ……っていうか馬鹿、口で言えよ俺独り言言ってるみたいじゃんか」
「言う前に白里がわかっちゃうんだろ、俺楽だからいいけど」
ぶたれた。当たり前か。
先に図書室を出て鞄を持つ。白里はすぐ出てきて結局二冊の本を抱えていた。
「図書室って本の揃えいいのか悪いのかわかんないよな」
「すごい古いのか新しいかだよな」
「真ん中はないのか、いやいつが真ん中なのかは知らないけども」
やたらもこもこした雲が沈みきっても赤い太陽に照らされて端だけ赤かった。
「きもちわるい色」
「ん…反対側真っ暗なのがまた」
上見ながら歩いてたら電柱にぶつかりそうになった。漫画か。
白里が手を擦った。
「もう日ぃ落ちたら寒いな」
「…手袋出すか」
「かも、うわつめた」
手の甲で触れると冷たいのが伝染してきたからすぐ引っ込めた。白里は俺を見て、目をまんまるにしてぱちぱち瞬いた。
「どしたの」
「……なん、でも」
ない、と呟いた白里は、制服の襟を立てて赤い頬を隠そうとした。
「隠れてないぞー」
ぶたれる予想はできてたからちょっと離れて言った。ら、足が出てきたので慌てて射程外へ逃げた。
「おいおいおいそこまで怒んなって!」
「うっさい!」
しばらく追いかけっこが続いた後、ココアおごるってことで決着ついた。なんか代償高いんですが。
めらめらに赤い
(真っ赤な頬は夕日に溶けにくい、覚えておくといいよ?)
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