世界平和にご協力ください。
朝起きて飯食って歯磨きして白里を迎えに行って学校行ってうち帰って遊びに行ってうち帰って夕飯食って風呂入って寝る。
日々ローテーション変わらず。
「億劫になるほど平和だな」
本日秋晴れ、午前授業の後の早い放課後の教室。真っ青な高い空を窓越しに見上げての台詞はあっさり黙殺された。
「白里ー」
特に意味のない呼び掛けは黙殺されるのがほとんどである。
(返事してよ)
「白里ー」
白里はぺらりと文庫のページをめくった。
「はくりー」
「………」
「はーくーりー」
「………あ、何?」
本気で気付いてなかった、という顔の白里に全身全霊で溜め息を吐く。地味にさみしーんだぞソレ。
白里はちょっとばつの悪そうな顔をして、しばらく本と俺をちらちら見比べた後、つ、と片手を差し出した。
「ん」
「ん?」
「……………」
白里は説明する気がないらしい。視線はもう文字を追いかけている。手は中空に留まったまま。
「………………」
そっと手を取ると、ゆるく握り返された。
それだけで口角の上がる自分がたいがい安いやつだと思う。
世界平和にご協力下さい。
(君がいれば、僕は平和でいられるようだ)
お題:にやり/nearly
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