あなたの猫になる 流は少しばかり俺を甘やかせすぎると思う。 「白里?」 よく晴れた日曜の、昼にはまだ早いから空いている喫茶店で、遅い朝ご飯代わりのパンケーキをつつきながら流は首を傾げた。 「どしたの白里」 「…ん」 生返事だけして砂糖を溶かしたダージリンを含む俺を流が覗きこむ。俺の無言の理由をよく回る頭で解析しようとして無理やり止めたのがわかった。俺がそういうこと、ぐだぐだ言われるのキライだから。 「…白里」 流は俺の前でややこしいことを考えないようにしている。その代わりに俺が疑問の答えを与えることを疑わない。 実にやっかいな、信頼(に似たもの)。 「………お前俺の言うことハイハイ聞いてていいの……」 俺が言うのはだいぶあれだが子供の躾は飴と鞭だ。甘やかせるばっかじゃろくな大人になりやしない。 …自分が子供だって自覚は、ある。だがしかし、この子供は飴と鞭の裏の裏まで読み解いてしまえるから、飴は飴にならないし鞭は鋼の刃をつける。 そして子供はそれでも、道の歩き方を知らないから誰かに手を引いてもらう他ないのだ。 ……仕方ないなぁ白里は。 流の溜め息と一緒に吐き出された(俺にしか聞こえない)声に肩が跳ねた。 「俺は基本ごほーびないと動かない人デスよ? ただし例外含む」 白里の笑顔はじゅーぶんご褒美。 口の中にパンケーキひとかけ突っ込まれるのと同時に読みとった台詞に目眩がした。 「あっま……はちみつ垂らしすぎ。てか浸かってんじゃん」 「とっとと食べないから染みたんだろー?」 けとけと笑う流が、外せないフードの上から頭を撫でた。 あなたの猫になる (寒い時期の猫はあたたかいところを知っているのです。) お題:にやり/nearly |