その唇は愛を囁かない 白里は最近よく絵本を読みたがる。 というか読ませたがる。 「流ってさ」 「ん?」 今日もまたボストンバックに絵本を入れてきた白里に、呆れ半分面白半分でそれを受け取ると、白里は落ち葉の絨毯に寝転がって言った。昨日も今日もよく晴れていたから落ち葉はからからに乾いている。 「俺が頼みごとすると基本断らないよね。めんどくさくても」 「めんどくささと白里の喜ぶ顔天秤にかけたら容易に後者に軍配が上がるもので」 軽く叩かれた。最近本気で叩かれること少ないなー。あんだけばっしばし叩いてたのに。 「本気出していいならやるけど」 「勘弁して下さい」 反論封じ兼ねて絵本を読み始めた。白里は少し不満そうな顔をして、それでも俺の隣に収まった。 「ああ どうして あなたの めは そんなに つめたいのだろう あなたの くちびるは そんなに つめたいことばを つむぐのだろう ぼくは どうしても あなたの くちから 『あいしてる』 と いってほしい これほんとに児童書?」 「最近流行りの『大人の絵本』」 白里が勝手にページをめくる。 「…白里みたいだなぁ」 「どーせ冷たい」 「自覚あった?」 言うと叩くくせに最後には一緒になって笑うから、俺は結局白里の言いなりだ。 その唇は愛を囁かない (でもたまには誉めてくれてもいいと思うんだ) お題:にやり/nearly |