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手も足も出ないから引っ掻く真似だけして
「んーあー。」
「…ひっどい声」

枕元の白里が眉をひそめた。
(間違いなく昨日あやかしものに水ぶっかけられたせいで)風邪ひいて熱出してついでに鼻にも来て、学校休んだら白里が来てくれた。制服のまんまだから学校から直だろうな。つーか白里のテレパスなら、風邪引きの横にいるだけで体調悪くなりそうだけど。それくらい本人も自覚してるだろうし。うわすげー俺超愛されてる。

「蹴るぞ」
「すいません」

すいません俺病人なんですが。あ、ティッシュないや。

「関係ない。手加減してやらなくもないけど。ティッシュ持ってくるけど他になんかいるか?」

あー…昨日かーさんがみかん買ってきてたな。結構でかい袋だったから白里の分あるし。

「…じゃあもらう。大人しく寝とけ」

白里はそう言って部屋を出た。テレパス便利ー。今本気声ひどいから喋らなくていいの超楽。
ああでもうちの母親、やたら白里のこと気に入ってるからなかなか離してくれないかな…早く返してくれないかな。や、俺のじゃないけど。
つらつら考えてると白里が戻ってきた。ちなみに第一声。

「お前思考回路自重しろ」
「無理だし」

頭ん中まとまらないんだよ、続けようとしてむせた。そしたら白里がちょっとおろおろして、抱えてたボトルのキャップを外した。

「水よりこっちのがいいだろうって、おばさんが」

…自分の息子の世話人任せにすんなよ、白里に構われるの嬉しいからいいけど。
ボトル受け取って飲んで、横に置いといてもらおうと白里を見たら白里がぼそりと呟いた。

「…すずら、」

え、代わっちゃうんだ。あーまーきついんだろうしなー。でも俺は白里がいいんだけど。せっかく自主的に側に寄ってきてくれてんのになー。つーかなんで俺こんな嬉しいときに風邪引いてんの。あー眠い…でも白里構いたい…。

「…馬鹿」

んー知ってる…多少馬鹿でいた方が白里は楽だろうし、俺白里に負担かけたいわけじゃないからそれでいいよ。

「あーもう…馬鹿、大馬鹿」

白里顔真っ赤…どしたの、ていうかひどい。あー駄目だ、眠い。
軽く頭を叩いていった白里の手をとって、紅里が作った剣だことか鈴蘭のナイフでできたマメとか他にも傷はたくさんあって、なのになんで綺麗なんだろうと思ってるうちに意識が飛んだ。


手も足も出ないから引っ掻く真似だけして


(爪も出せない場合どうすればいいんでしょうか)


お題:にやり/nearly


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