WestendCompany.
拒絶事象
帰り道、凜と凪と三人で歩いてると、凪があたしの袖を引いた。
凜が言った。
「あすか」
「なに?」
「走る準備してて」
凪があたしの前に出た。凪は槍、凜は拳銃、二人とも銃刀法違反なのに周り誰も気付かない。
結界、かなぁ。あたし意味ないけど。
思ってる間に凪が槍を構えた。や、あれは、受けたな。
凜があたしの腕を引いた。
「行くぞ」
「あいあい」
見えないひとがいても仕方ないから凜と二人で走った。
家まで徒歩二十分、ちゃんと帰れるかなぁ。
近道の裏路地を走ってると、凜があたしを抱えて右に跳んだ。
そこらの木箱や段ボールが砕けて破片が降ってくる。うーむ、あの壁の抉れ方からすると爪、だなぁ。でっか。相変わらず見えないけど。
凜はすぐ立ち上がって言った。
「走れ!」
あたしはそうした。あたしがいない方が、凜も凪もやりやすいのだ。
家まであと五分だ。
『ちょっとそこのお嬢さん』
凜はともかく、凪は遅いなぁ。相手そんなに強いのかな? そんなやばいのがいるって聞いてないんだけど。
『お願いを聞いてほしいのですが』
あ、もしかして凪ってば凜の方優先してる? あるなぁそれ、二人ともあたしがあやかしもののご馳走ってのを気にしてるけど、本来凜も相当おいしいらしいし。
『お嬢さんの体、頂けませんか?』
あたしは振り返って後ろ向きで歩いてみた。凪が来るとしたら多分上からだ。周りに誰もいないからぶつかる心配はないし。
『さぁ………な、馬鹿、な…!
ぐぁああああああああ!!』
「んに?」
振り返ると、黒いコートが一着、道の真ん中で風に揺られていた。
あや、さっき背中にぶつかったのこれか。どっかから落ちてきたのかな。
あたしはコートをそこらの電柱の足場に引っ掛けて歩き出した。
さ、凜と凪遅くなるみたいだし、早く帰ってお夕飯作って待ってよっと。
…知覚されないものの悲劇。
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