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WestendCompany.
2.午後



13:06p.m.

 長い髪を括ってツナギを着、耳覆いのある帽子を被った美里が、傍らの要におずおずと尋ねた。

「あの、…ほんとに、おかしくありませんか?」

 両耳を手で覆って落ち着き無く辺りを見回す美里に、要は苦笑してその肩に手を置いた。

「大丈夫だって。怪しまれてるとしても、修理屋にしちゃ二人共細っこいなぁってくらいだよ」

「…そもそもどうして修理屋なんですか? 小夜ちゃんや捺ちゃんみたいに日雇いの方でもよかったんじゃ」

 唇を尖らせて美里が言うと、要はにっこりと笑って言った。

「俺がここの主嫌いだから」

「は?」

「嫌いな奴に頭下げるとかすごい嫌なんだよね。修理屋なら主人と顔合わせなくていいからさ」

 じゃあ行こっか、と歩き出す要を茫然と見送って、美里は慌てて後を追った。






15:17p.m.

「あーすかせーんぱいっ」

 屋敷に程近い村の隅、打ち捨てられた納屋の無事な部分に、この国の技術水準では有り得ない計器類が壁の如く積み上げられていた。
 その手前の椅子に座っていたあすかが、リオの声に振り返った。

「リオちゃんお帰りー」

「先輩方の着付け終わりましたー」

「こっちも連絡来たよん。発煙筒照明弾爆竹その他撹乱用器材の設置終了、だってさ」

 開始まで時間あるから晴れ姿見に行こうかな。
 二人の少女は連れ立って納屋を出た。
 先程まであすかが座っていた画面には、屋敷の見取り図が映っていた。






16:53p.m.

 ざん、
 きゆらの側の木が枝を鳴らして、凜と凪が降り立った。
 東側の庭の木立ちの中、屋敷の影に隠れて早くも暗い。わざわざ時間を指定したのは凜で、きゆらは自分の提案した集合場所が却下された理由を悟った。なるほど薪小屋は屋敷の西側で、どう頑張っても影に隠れるのは無理だ。

「小夜と捺の話と俺が回った場所、それと屋敷の設計図。全部一致しない」

 がさ、と設計図を広げて、見つけた相違点を指す。
 二人がどういうことだ、と目で訊いてきたので、きゆらは口利こうよと思いながら言った。

「午前中に捺が通った道と午後に小夜が通った道、目的地は同じはずなのに道順が違った。
確認したけど、雇われは十一時半頃に一斉に昼休憩をもらったそうだ。
多分そのときに、」

 設計図に指を置いて滑らせる。

「この辺にあった設計と実際のズレ、設計上あるはずのない空白を、こっちに移動させた」

 きゆらは二人と目線を合わせた。
 同種のくろが交わる。

「午前中に調べたらどこにも入り口がなかった。多分屋敷の内側にはないんだと思う。でもパーティの客が入れないなら、あれがあそこにある意味がない。
入り口探そう。今なら通じてる」

 教会の五時の鐘が鳴ったとき、影の中に人影はなかった。



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