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風穴の向こう側
再会
お城には顔パスで入れた。どうなんだろう、このあたりってゲーム補正なのかな。考えると悲しくなってくるからやめよう。
そう、考えるより大事なことが世の中には溢れている。

「ひゅーうー!」
「うわっ!」

久々に再会した贔屓の友人とのスキンシップとかね!

「きゃーヒュー久しぶりー! すごくどうでもいいけどストラタの軍服の燕尾部分無駄にかわいいよね!」
「本当にどうでもいいな」

後ろから教官の声がしたのでそっちに寄っていく。いきなり抱きつかれてぐっしゃぐしゃにされたヒューバートの文句は総スルーで。いやだって聞く気ないし聞いててもからかうだけだし。だったら始めから聞かない方がいいよね! っていう気遣い!

「お久しぶりっス教官。フェンデル含め調子どうっスか?」
「ぼちぼちだな」

ざっと見る限り教官もヒューバートも変わりはないようだ。やつれてないし、むしろすこぶる健康体。いいことだ。

「すごいな、ゆきみちは。なんだかこっちまで明るくなるよ」
「騒がしいだけですよ、陛下」

ヒューバートが苛々と眼鏡に手をやりながら言った。どっちにも否定は返さずに、俺はほぅっと溜め息を吐く。

「……大変そうだねぇ、王子。痩せた?」
「本当に王子って呼び続ける気だね、ゆきみち。いや、むしろ少し増えたよ」
「体鍛えらさってんでない? 適度な運動は奨励しとくけど、無理して倒れたら代わりはいないんだからね」
「分かっているさ。一生分に余るだけ、心配も迷惑もかけたことだしね」

にこ、と笑う瞳には、もう赤は混じらない。それは色をいくらか穏やかにして、アスベルに継がれた。
日本じゃやっと選挙権がもらえるっていう年の王様は、優雅でいて気安い態度でそこにいた。……それに俺がどれだけ安心したか。

───まだ自信と信頼がなかったわけだ
───王子が、ちゃんと王様として、やっていけるか否か

「本人の資質的には問題ないんだけどね。何せど頭に盛大なケチがついてるし」
「イカロスか?」

文脈も何もない独り言に、慣れた様子でアスベルが言う。そんなに俺イカロス相手に独り言いってるかな。
後ろからはシェリアが付いてきてて……てあれ?

「教官、パスカルは?」
「待ち合わせに遅刻したので置いてきた」
「ええー」

遅刻する方もする方だが置いてくる方もたいがいだ。ていうかいいのかそれで。

「あーんもー……向こうでソフィと合流しててくれればいいんだけど」
「ソフィが?」

食い付いてきたのはアスベルだった。出かける直前でいなくなったんだっけか。そんなに気にするなら先に探してやれよって思うんだけど。そんなわけにゃいかないんかなー身分ってめんどくせーなー。

「フェンデル行きの船に乗ったって聞いただけ。とりあえず反抗期っていう解釈して、魔物退治の方手伝いに来たんだけど」
「……反抗期、か……」

アスベルが俯く。んー、できれば根掘り葉掘り聞いた上で全力で相談に乗ってあげたいんだけどなー。

「王子ー、魔物退治って急ぐ?」
「できるだけ早く片付けたいね。……アスベルにもソフィにも、少し時間をあげた方がいいかもしれない」

後半の声が低い。冷却期間がいるってか。ソフィ気にしながら戦われても困るけど、そこら辺はアスベルも気持ち切り替えるだろ。大まかな居場所はわかったわけだし。

「りょーかい。……ありゃ」

頷いて、歩き出したところで気が付いた。……パスカル作対暴星の指輪、多分部屋に置いてきちゃってる。

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あきゅろす。
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