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風穴の向こう側
実際歩くとめんどくさいよ?
アンマルチアの遺跡はけっこう好きだ。内装めっちゃ綺麗だし、移動床もちょっと怖いけどいい音がするし、パズル系のダンジョンは嫌いじゃない。

「……どうしようか」
「んー……」

でもこれ完璧行き止まりなんだけどさ。底の見えない縁を覗き込んで溜め息。

「俺らが仕掛けに気付いてないかギミックが壊れちゃってるか、どっちだと思う?」
「仕掛けが僕たちのいる側にないのかもしれないよ」
「……仕掛けに気付かなかった、ということに期待しようか。戻るぞ」
「うーい。……あ、待って二人とも」

行き止まりできびすを返しかけた二人の服を引く。
しずしずと下りてきたのは、それだけじゃ動かないオレンジの台座。

「……おおー」

今俺らがいる床と同じ高さで止まった台座に声が漏れた。ほんとどーなってんだこれ。

「上から……ヒューバートたちか?」
「これなら先に進めるね」
「……つーか……ここ元々上下別々のパーティで進まなきゃいけなかったわけ……?」

なんてめんどくさい、つーか階段どこだよ。溜め息を吐いた俺には構わず、アスベルが「なぁ、」と言った。

「これと同じようなものを、どこかで見たような気がするんだけど」
「ウォールブリッジの地下遺跡だね」
「ああ、ソフィの幻を見たところか」

懐かしい、とか言ってるアスベルに対して、王子は妙に暗い顔だ。

「おーうじっ」
「わっ、」

首に腕を回してぐいっと引いてやった。つかこいつまじ背ぇ高い、俺もわりとある方なのに……悔しくなんかないんだからねっ、とか言ってみる。寒かった。

「どしたよ。とりあえず吐いちまえ、アスが気にする」

低い声で聞いてみた。とはいえ、王子から見えない位置でアスベルがめっちゃこっち見てるけどな。
促すと、王子は一つ溜め息を吐いた。

「僕は……ソフィに、許してもらえるだろうか」
「何を」
「ソフィを……大事な友達を、僕は傷付けようとした」

そっと伏せられた目に赤は混じっていない。王子は抗ってくれた。戦いたくないと示してくれた。それが俺には、泣きたいほど嬉しかったんだけど。

「あの時、僕がもっとラムダに抵抗して、操られていなければ……戦うことにはならなかったんだ」
「なんだ、そんなことか」

結局口出すのねこいつ。びくっと肩を跳ねさせた王子に付き合って、俺もアスベルの方を振り向いた。つーかお前、そんなことってのはないだろ。

「そもそもソフィは怒ってないよ。ソフィがリチャードと戦ったのはプロトス1としての使命だからだし、それにソフィはずっと、お前とは友達だって自分に言いきかせて戦うのをためらってたんだぞ」
「そう、だったのか……」

王子は広げた両手を見下ろして、ぎゅっと眉を寄せた。そのシワ癖になるらしいぜ。やめた方がいいにゃ。
アスベルがその手を取って下ろさせた。

「不安ならもう一度、あの木の下で友情の誓いをしよう」

な、と同意を求められて、俺は笑顔で頷いた。ナチュラルに俺がカウントされてんのがめっちゃ嬉しい。

「そうだな。……ところでアスベル」

王子が頷いて、素晴らしい笑顔を見せてくれた。

「僕は一応、ゆきみちだけに言っていたつもりなんだけど」
「ん? うん」
「盗み聞きはよくないよ、アスベル」
「え……ちょ、リチャード……?」

さ、先進もうか。なんか背中の方からアスベルの悲鳴が聞こえた気がするけど気にしなーい気にしなーい。

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