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せんたくびよりのちあめ*円秋


円秋。
しかし前半いや三分の二は秋ちゃんの日常的な感じ←









今日は日曜日。
空は青いし雲も少ない。
晴れやかで洗濯日和だ。
こんな日だって代表組の練習はある。
みんなは今お昼休みで、各に休憩をとっている。
洗濯日和に乗じて、溜まっていた洗濯物を片づけてしまおう。
そう思って洗濯物をかごに詰めていると。

「お前が悪い!な、綱海もそう思うだろ?」
「あんたが悪いんや!緑!そう思うやろ?」
「緑は酷くないか!?」

練習後なのになんて元気なんだろう。
私は洗濯物かごを抱えてそう思った。
目と鼻の先ではリカさんと塔子さんが攻防戦を繰り広げていた。
どうやら塔子さんが楽しみにしていたゼリーをリカさんが食べちゃったとか言う話みたい。
まぁお手伝いをしてくれないのは置いといて。
巻き込まれた綱海さんと緑川くんは顔を見合わせて困っている。
変に口を出すともっと巻き込まれるし、かといって止めないとなんだか大変なことになりそう。
二人とも大変だなあ。

「勝手に食うお前が悪い!二倍にして返せ!」
「名前書いてなかったんや!美味しそうな物があったら食べるやろ!何で二倍返さなあかんねん!」

しかし随分可愛らしいことで喧嘩してるなあ。
私はちょこっと笑うと洗濯物に取りかかる。
柔軟剤や洗剤にこだわる人もいるから洗い分けが大変。
でもマネージャーとしてはやりがいがある仕事だと思っている。
みんなが気持ち良く練習してくれるように、そんな風に思っている。
洗濯も嫌いじゃないし。
ちょっと鼻歌なんか歌っちゃたりして。
上機嫌に洗濯機を回す。

「綺麗になあれ〜。」

がたがた仕事をし始めた洗濯機を撫でてそう呟く。
私がこうするから洗濯機の機嫌が良くなる訳じゃないんだけどね。
こうするのは私の気持ちの差だろう。
洗濯物はくるくる洗われているし、洗濯機が止まるまでゆっくりしようかな。
大きく延びをする。
なんだか今日は良いことがありそうな予感。
根拠は全くないけれど。
背後では喧嘩が最終局面を迎えつつあるみたい。

「リカがわぁるぅいぃぃ!」
「塔子がわぁるぅいぃぃぃぃ!」
「ちょっと君達、止めないか!」
「そうだぜ塔子!リカ!こんなの海の広さに比べたら…!」

なだめる男の子二人を押し退けて、相手に掴みかからんばかりの勢いで必殺技を放とうとしている塔子さんとリカさん。
まさに技を出しかけたその時。
がたがた洗濯機が仕事をまっとう中の時。
私が止めに入ろうとしたその時。

「つめた…。」

晴れていた空が一転、裏切って黒く染まっておまけに雨を降らせ始めた。
一気にざーっと前が見えなくなるくらい、強い雨がみんなを襲った。

「きゃああ!?つめたぁぁぁ!」
「うおお!?痛い痛い!雨が痛い!」
「みんな屋根のあるところに!」

ちょっと広い所でと外の方に出していた洗濯機は、仕事中なのに雨ざらしになってしまった。
せっかく洗っているのに洗濯物駄目になっちゃうかも…。
私の良いことがありそうな予感なんてこんな物だよねと少し悲しくなる。
はあとため息をつくと。

「どうした?秋?気分でも悪いのか?」

そう訪ねてきたのは、雨に濡れて猫耳みたいな髪の毛がしなっているけど、円堂くんだ。
沈んだ顔をしていたのがばれてしまった。
理由が理由なので恥ずかしくなって笑ってごまかす。

「大丈夫!それより風邪引かない?みんなお風呂入った方が良いんじゃないかな?」
「そんなの秋達が先に行けって。風邪引いたら大変だぜ?俺達は特訓してるから!」
「でも…。」

悪いよ、と言おうとしたのだけど。

「塔子と綱海のせいや。ウチこんなに濡れてもうた。」
「俺関係ないだろ!?」
「あたしだって!リカのせいでこんなに濡れたんだけど!」
「ウチお風呂入る!秋、入りに行くで!塔子は男子とでも入れば良いんや!ほな、行くで!秋!」
「上等だこらぁ!綱海!一緒にはいrうわあ!?秋!?やだ!リカとは入らないんだ!」

嫌がる塔子さんを引っ張ってお風呂へ急ぐ。
塔子さんならやりかねない。
そして綱海さんなら許しかねない。
喧嘩している二人と入るのはちょっと大変そうだけど、背に腹は代えられなかった。

「ごめんみんな、先入らせてね!」

そう言って塔子さんを引っ張って行って、脱衣所に突っ込んだ。



何とかお風呂を終えてみんなに明け渡す。
三人で入るには大きすぎるお風呂だけど、それもまた新鮮でちょっと楽しかった。
二人の喧嘩は明日私がケーキを作ってくることで解決。
丸く収まった。
三人で食堂の窓から外を見る。
まだまだ雨は降ったまま。
洗濯機だって仕事を終えているだろうに。

「なんか憂鬱だね…。」
「な。雨って嫌やな、髪の毛さばさばすんねんな。」
「サッカーも出来ないしな〜。」

二人もつまらなそうに愚痴を漏らす。
机に突っ伏して足をばたばたさせる塔子さん。
櫛で髪をとかしているリカさん。
私は手持ちぶさたで。
お風呂上がりでほかほかで、そのまま突っ伏してうとうと。
うとうと…。



…き……き…

何かなあ
き?
鬼?
木?
稀?
もうちょっとだけ
もうちょっといいでしょう?
みんなおふろにはいってるんだし…

「あーき!」
「…え?」

目を開けるとそこには笑顔の彼が。
良い香りがする。
猫耳みたいな髪の毛もしんなりしてない。
あれ?
私ったら結構寝ちゃってたの?
円堂くんは私の前で手を振って起きているかどうか確認。

「起きてる?」
「うん、なんかごめんね…。寝ちゃってて…。」
「いや、頑張りすぎるなよ。たまには良いんじゃないか?」
「…ありがとう…。」

優しいなあ。
円堂くんはいつも暖かい。

「そうだ、雨やんだぞ!」
「本当!?」
「おう!」

窓を見ると本当だ。
雨やんでる。

「練習できるね!」
「おう!」

にっこり笑う円堂くん。
私もにっこり笑って。

「何やお二人さん…。ウチは邪魔やったな!」

後ろで見ていたリカさんにからかわれて真っ赤になる私。

予感、ちょっと当たってたかな。



*せんたくびよりのちあめ

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