01.“好き”
例えばブラウン管の芸能人だとか、
通りすがりの人だったりだとか、
格好良いなぁって憧れてはみてもそれが恋だなんて絶対嘘だと思ってた
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01.“好き”
大学で授業を受けて、夕方帰り道で全身に電気が走る様な衝撃を受けた。
“格好良い”
単純にその一言に尽きるのに声は出なくて、酸素を吸うことさえ身体は忘れてたと思う。
黒髪に左右ピアスが5個、捲った袖から覗く腕は細いのに筋肉があって、何より顔が本当に本当に格好良かった。もうタイプとかそういう問題じゃなくて、誰が見てもきっと脚を止めてしまうような人を惹き付ける才か何かがあるんじゃないかって…本気で思った。
「はー…」
家に帰ってからも名前も知らないあの人ばかりを頭に浮かべては出て来るのは溜息で、初めての“一目惚れ”っていうモノにどうしたらいいのか分からなくて。
だってまさか喋ったこともない中身も分からない人が気になるとか、正に夢世界だけの話でリアルにあり得るなんて想像すらしなかったから。
どんな声?どんな人?どんな顔して笑うの?
脳内はあの人一色だったのに、
「、メール…」
鳴り響く着信音のせいで一気に現実世界へ戻された気がした。
「…別に嫌々メールしなくたっていいのに」
送信者、若人弘。
本文、“今帰ったから寝る”
毎日欠かさず送られてくるメールはその一文で、それ以上一文字も増える訳じゃなく減る訳でもなく、業務的な一言ただそれだけ。
決まってアタシが返信するのも“おやすみ”の一言。
「何で付き合ってんだろ、」
愚痴みたく溢したくなるのも当然、アタシと弘は付き合ってるのに最近会話した記憶すら無い。学校ですれ違うことはあっても素通りが当たり前。
挙げ句の果てには友達から『浮気してる』だなんて言われて。
悔しくて哀しくて適当に遊んだこともあった。ファミレスでご飯食べてドライブに行って?退屈の繰り返し。
だけど結局疾しくて嫌になって、アタシは弘じゃなきゃ駄目なんだって思ってたのに。
弘は相変わらずアタシを気にもしてくれなかった。アタシばっかり好きで、弘が何を考えてるのか理解出来なくて…それでも付き合い始めた時は楽しかったなぁって。女の子と話すことが凄く好きみたいでチャラチャラしてて、何この男って思ったけど、喋ってみると面白くて気が合って。冗談半分のノリで「アタシ達付き合ってみる?」って言ったら『そういうのはちゃんと好きだって思ってからでしょ』なんて似合わない真面目な言葉を並べたもんだから堕ちたんだよね……
この人良いなって、ちゃんと考えてるんだって、尊敬と情愛が膨らんだ。今でも思い出すと初々しくて口角が緩んで、好きだなぁって思うの。
だけどね。
「…見えたのは弘じゃなかったんだよ」
ずっと続くうやむやな関係が真っ暗な闇に居るみたいで、いつか弘が手を伸ばしてくれるって信じてたけど…見えた光りは弘じゃなくてあの人だった。
今日、アタシは彼氏とは違う男の人に恋をした。
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光VS若人くん、始めました!
だけど初っぱなは暗くて意味が分からない話になっちゃいました…(´;ω;`)
こんな出だしでちゃんと完結出来るのかは不安だらけですが、あんまり暗くなりすぎないように続き書いていきたいと思います。
(例の話を+αしたお話です(笑))
(20090430)
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