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スリーピングデイズ


新年度。それは新しい出会いに心躍らせる桜舞う春を想像させる言葉だろう。しかし生憎、今年は桜はとうに散り、姿は見えない。
騒がしい周囲に少しだけ嫌悪感を抱きながら、「新入生」と書かれた花のついたバッチを貰い、体育館へと爪先を向けた。心は憂鬱だが、誰もそんなことを指摘する人間はいない。
空だけが突き抜けるように青かった。







眼の端できらりと何かが光るのを感じ、そちらに眼を向ければ、珍しい橙色の髪の毛が陽の光に透けて輝いて見えた。何人かの輪の中にいる人物が誰なのか、ときやは知っていた。
「黒崎一護」だ。クラス分けの紙が張り出されていた前でチェック済みだった。
ときやは綺麗なものが好きだ。それが何であれ、ときやが美しいと感じたものはチェックしないと気が済まない性格だった。その隣に居る人物も、なかなかに美しい青年だ。チャドと呼ばれていたが、本名を佐渡といったはずだ。同級生の中で飛び抜けて背が高く、褐色の肌に映える屈強な体格の持ち主だ。黒崎と話す言葉遣いが少々乱暴な少女もなかなに整った容姿をしている。ボーイッシュな短い黒髪が似合っており、強さを宿した瞳はまっすぐだ。その前に立つ少女も美しい。手入れされた流れるような少し明るめの茶髪に、女として羨ましい身体のライン。花が綻ぶような微笑。お近付きになりたいものだ、と心の中で思いながら、踵を返す。
オリエンテーションで一通りの自己紹介を聞き流しながら、ときやは窓の外を見ていた。

「次、神凪」

短く名を呼ばれ、ときやは視線を教壇に移すと、ゆっくりと立ち上がった。自分に視線が集まり、何人かが息を飲み音を聞きながら黒板の前に立つ。そして、ぐるりと教室を見渡した。

「神凪ときや。これは事故の後遺症。趣味はきれいな物を探すこと。どーぞよろしく」

自分の右眼を指差し、ときやは短く自己紹介を済ませると、すぐに自分に宛がわれた席に戻る。視線が尚も自分を追っていることに気付いていたが、それには気付かないふりをした。
次、という教師の言葉に視線が外れるのを感じ、ときやは頬杖をつくと、再び窓の外を眺め始めた。
飛行機が、飛行機雲を残しながら一直線に飛んでいく。
今日も空は青く深い。









title by カカリア

鰤はほとんど覚えてない(汗)のですが唐突に書きたくなったので、ちょこっとだけ…。
京楽さんで短編も書きたい所存。







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