儚さと
桜の散る姿の、何と儚くも美しいものなのでしょう
桜を見る度に耳に蘇る音がある。何処で耳にしたのかはもう覚えていないが、その言葉だけは半助の耳に何時までも残っていた。
「忍のくせに――…」
呟いた言葉を、隣にいた伝蔵は拾ってしまったらしい。訝しげな表情に苦笑いをして、半助は桜を見上げた。
「何時だったか…散る桜の儚さが美しいと言った忍がいました。仕事帰りで、血生臭い臭いを撒き散らしながら桜を見上げていました。…他人の命を奪いなから、桜の儚さが美しいと」
倣うように桜を見上げた伝蔵の目の前を、はらはらと舞う桜の、なんと幻想的な。
ぎゅうと握られた拳を見ながらも、伝蔵は半助の肩を持つ気にはならなかった。むしろ。
「…それは、」
感じ方は、人それぞれだ。立場や境遇によっても変わってくるだろう。それでも。
「他人の命を奪う立場に居るからこそ、儚さが美しいと感じるのだ、半助」
半+伝(080804)
ただ最後の台詞と、それに相対する土井先生が書きたかっただけ←
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