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novel(一部腐向け)
【石←かり】浅はか
「透明な嘘と濁り切った嘘、どっちがいいと思う?」
僕はそう問いかけ、薄く笑う。おかしくもないのに薄く笑うのはきっといつもの癖だろう。
「さあ…どちらだろうね。透明な嘘かな」
彼は特に考えることもせず、静かに答える。僕の笑い方よりも見ていて心地のいい笑顔を浮かべた。
僕は笑顔を顔に貼り付けたまま、静かに言った。
「透明な嘘は、掴めない。濁り切った嘘は、底が見えない。」 彼は少し考えて、少し意地悪そうな笑みを浮かべる。僕よりも表情が豊かなんだな、とぼんやり考えた。
「ああ、じゃあ透明な嘘は君の笑顔で、濁り切った嘘は君の話かな?」
そう言う彼の声は、はるか遠くから聞こえているような気がした。実際には彼は変わらず僕の目の前にいる。
「僕の笑顔は、嘘みたいで掴めない?僕の話は…嘘で底が見えない?」
僕は本当にそうかな、と続ける。僕の嘘は浅はかだからだ。
彼に認めてもらいたくて、エンターテイナーを演じている。
自分でも知っていた。この笑顔が何ももたらさないことも、自分が語る嘘のような話は永遠に誰からも認められないことも。誰に何を与えるでもなく、誰に何を与えられるでもなく。自分は、ただただ自己満足で生きている。


(嗚呼、どうしようもなく浅はか)



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あきゅろす。
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