ネタ
神子を召喚してみました


 ベナイ王国は遙か古に英雄が封印した魔王の呪いにより、数十年に一度、必ず大災厄に見舞われる。
 それは、止まない雨であったり、大地の揺れであったり、天候に関わらず実らぬ植物であったり。
 このままではいけない。このままでは、魔王を封印して平和となったはずなのに国が滅んでしまう。
 王に依頼され、時の賢者は打開策を模索した。
 そして、見つけられたのは、異世界より神子を召喚することであった。
 本来この世界に存在するはずのない神子を召喚することで、ほんの僅かだけ世界が乱れる。それは、魔王の呪いにも影響し、呪いは軽いものへと変わった。さらに、神子を王の花嫁として世界に深く組み込むことで、呪いは完全に消滅したのだ。
 しかし、神子が没すれば、魔王の呪いは再び蘇り、国を襲う。
 故に、ベナイ王国では、王の花嫁を異世界から召喚することが慣わしとなった。
 父王より王位を譲られて暫く、神子である母を喪った現ベナイ王ベルナルドも、とうとうその儀式を迎えることとなり、緊張した面持ちで儀式の間に参列した。
 賢者が呪文を唱え、魔方陣が光る。
 人影がゆらめいた瞬間、誰もが先代神子のような美しい女性を想像した。

「な、なんだっ」

 が、突然賢者が狼狽したことにより、参列者は「え」と声を上げる。
 魔方陣を凝視すれば、ゆらめく陰は二つ。
 一人しか召喚されるはずのない神子が、まさか二人も、と異例の事態に混乱するが、それは陰が形となり、人間としてその場に現れた瞬間、強制停止をかけられることとなる。

「ばかな……」

 呟いたのは誰だろうか。
 神子は二人現れた。

 初老を越えた男と、その男を赤い縄で芸術的に縛り上げる若い男であった。

 神子を「花嫁」とするのが「義務」であるベルナルドは、立ったまま失神した。

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