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愛しいと思うその気持ちは、傷なんかとは違う痛みで
淋しいとかむなしいとかそういった気持ちに似ていて
切ないと言ってしまえば簡単に表現できてしまう
でもそんな切ない気持ちや愛しい気持ちなんて表現できない

他人は知らない。俺にはできない
だってどう表現するの
どうやってアンタに伝えるの



「好きスキスキ好きすきスキすき」
「……っえち…」
「助けてよ」

海堂せんぱい

海堂をベッドへ押し倒し、跨がるように上へ乗るとうなだれた越前に海堂は焦った
いきなり家に呼ばれたかと思うと、越前の家族に挨拶しようとする礼儀正しい海堂の腕を取り、無言で越前は部屋へ駆け上がった
相変わらず汚い部屋に溜め息をつく暇さえ与えずに越前はベッドへ倒したのだった

「越前…!!」
「すきすきすきすきすきすきすき…!」
「ちょ…お前っ」

大丈夫か?  海堂はいつもと違う、感情を溢れ流し出す越前に戸惑った。うなだれた頭からは顔は見えず、ただ呪文のように、とり憑かれたように繰り返しそれだけを呟き叫ぶ

声には強弱がある。とり憑かれたわけではないだろうと海堂は右手を越前の頭に乗せた

「…落ち着け。大丈夫か?」
「………っすき…」
「もう一度聞く」

大丈夫か?  ゆっくりと越前の頭が縦に揺れた。海堂は安心して溜め息を吐いた。仰向けに寝、越前を腹の辺りに乗せたまま、部屋のドアが閉まっているかどうかを確認する。きっちりと閉まった部屋のドア。鍵はかかってなさそうだが、閉まっているならノックがない限り安心だと今度は自分を落ち着ける

「越前…」
「っ…」

右手で越前の頭を撫で、左手でゆっくり肩を自分の方へ軽く寄せる。越前の身体がその軽い動作で簡単に海堂へと倒れる

「ど…したんだよ…」

倒れた暖かい小さな身体を  愛しい  と思い熱い溜め息を吐く。海堂は右手で愛しい身体を撫で、更に落ち着くようになだめる。越前の身体からは力が抜けて規則正しい息遣いが、下の海堂の身体を揺らす
密着した身体とカラダから熱が行き交う。もうこうなってしまうと『海堂薫』『越前リョーマ』など関係なくなって、ただただ一つの温かい塊を切望する


「越前……」
「あースキすぎる」
「…あぁ?」
「スキで好きで好きすぎてスキすぎる」


海堂先輩…好きすきスキ…愛してる

愛してる

愛してる

愛してる

「どうしたらいいの。俺はどうしたらいい?」

ぎゅぅ と力強く抱きしめられて海堂は嘔吐感を感じた。息ができないぐらいの強さで、越前が本気で力を加えて抱きしめているのが伝わる

「えちぜ…」

苦しい と言おうとしたが声にならない。息がしたくて無理矢理越前を引きはがそうとするが、先程の越前の言葉が宙を舞って海堂の手は空振りに終わる


息が出来ないくらい苦しい
酸素を吸いたいと思うが思うだけで終わる
両手は空振りして空気を掴む

助けて

助けて

貴方を好きで愛しくて

ただそれだけのはずなのに

それだけのはずなのに

どうして涙が流れるんだろう


どうして息ができないんだろう


「ねぇ、隣に置いておいてよ」
「あぁ??」
「アンタのジャマなんかしない。だから」


死ぬまでアンタの隣に置いて



息絶えるその瞬間をアンタの隣で




ああ




狂ってしまった



「ジ…ジャマなんか…言わねぇ…よ」
「わかんない。どうして…そんな…言うの」

海堂はぎゅぅと越前を抱きしめ返す。苦しくなったのは越前の方で、むせ返るように強く咳をした。  苦しい   パクパクと唇を動かす。海堂に伝える為に声を出そうとするが声は掠れて相手に届かない

苦しい



苦しい



痛いくらい



ああ



この感じ




この感じがアンタへの俺の想いににている




「懲りたかコラ」
「っ……!先輩っ力、つよい…だから!」
「ウルセェ。テメーが先にやったんだよ」
「力…ちがう…!」

抱きしめるのを止めた海堂に開放されて一気に空気が器官を通り抜ける。むせながら抗議をする越前を海堂は睨んだ
大体テメーが狂うからだろ  睨みながらそう吐き捨てると逆に睨まれ返されて海堂の額に青筋ができる


「やめれたら…どうなるんだろ」
「なんなんだ一体テメェは」
「…アン………、せ先輩は俺のこと好きじゃなかったらどうなの?」
「意味が…わかんねぇよ…」
「だからさ……うぅん。いいや」
「よくねぇ」
「……」
「俺がテメェをス………じゃなかったら…」
「何かかわる??」
「………なにも」
「……っだよね…」

アンタはそーだよね  呆れたような、諦めたような口調と目線でいってから海堂の胸に頭を落とした。海堂の心臓の音がリアルに耳に響いて気持ちが良かった。自分の心臓の音と比べる。ちぐはぐだった音が重なると越前は無償に嬉しくなった

「あぁ…だが…」
「ん?」
「ないよりあった方がいいんじゃねーか」
「………苦しくても?」
「……当然だろ」
「当然って……」
「好きなもんはあった方がいいだろ」
「!……………」
「目の前にあるといいじゃねーか」
「っ…………Oh!」
「あぁ?!ふざけてんじゃねぇ…!」


好きだもんね


愛しちゃってるもんね


ないよりあったほうがいいよね


苦しくても痛くても辛くても息ができなくてどうしようもなくて


助けなんてなくて


それでも


目の前に好きなアンタがいる


それだけで幸せだよね


「ふざけてないし、先輩にしては珍しい」
「あぁ?!テメェじゃあ何か?テニスない方がいいっつーのか」
「………ヤダ」
「ほんっっっとテメーはどうしようもねぇ」

甘えてんじゃねーよ  背中を言葉とは裏腹に優しく撫でられる。越前の腹からか胸からかワァっと温かい何かが流れ出して身体をかけ廻る

苦しくない痛くない辛くない息もできる

確かにこんな想いだってあるんだよね


「先輩、先輩」
「なんだよ」
「しようか」
「何を」
「sex」
「………ぶっ!??」
「ゴメンね。ヤりたい」
「おまっ…!おまっ…!!」
「あ、鍵しめないと」
「えちぜ…!!」

そうと決まれば行動あるのみ。素早く鍵をしめてはまた海堂の上に跨がって、着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。赤い顔をしてそれから目を背けた海堂を一笑いして、海堂の右手を自分の晒された胸にピタリとつける

「ヤろ」
「っ……クソ」

海堂の手がスルリと越前の後頭部に回ると強い力で引き寄せられて、ぶつかるようなキスをした

舌が触れると痺れたように身体が震える
髪に触れて触れられて、性急に纏う服を脱ぎ捨てる



息もできないくらいの恋をした

俺はアンタを愛してしまった

恋なんか通り越して、



後悔がないなんて言い切れない


だっていつかはおわってしまう


おわりのないものなんかない



でも



ないよりあった方がいいって今は思うよ


アンタがそう言ってくれたから


愛しくて愛しくて愛しくて

切ないようなそんな感情を表現することはできないけど

苦しいなら

苦しくてしかたないなら




俺とアンタで抱きしめあおう



息もできないくらい



抱きしめあおう



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END


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