[携帯モード] [URL送信]
 


薄く形の良い唇からはじまって、筋の通った首、少し出た喉に骨がしっかり浮き出た鎖骨
相手のそこに色を感じた

海堂は鎖骨までゆくとたまらず、しかし無意識に目を目に向けた
ガラス玉のような目を海堂に向けてだんまりと見ている
校内で待ち合わせたわけではなく、たまたま出会った。廊下で会ったのだが、なんとなく近くの使われていない部屋へ入った。今、思えば いたたまれなかった 体を重ねることまでやっている海堂と越前。明るいうちからだってもう気にせず全身を擦り寄せていた
だからなんとなく いたたまれなかった

暖かい冬だと周りは言った。実際、外で部活をやっていても去年より寒さに震えることはなかった、が

「上着はどーした」
「ん?ああ」

教室だよ と越前は真顔で海堂に言った。生地の薄いシャツからはインナーとして着ている黒いTシャツがうっすらうつっていた。暖かい冬とはいえ冬は冬だ

「体育だった」
「……だらしねぇ」

体育でバスケットボールをやった。真面目にやったから暑くなった、今も暑い 越前は訴えるようにいいながらシャツのボタンを緩め外していった
暑いからだらしない格好をするのは好ましくない海堂は眉をしかめて越前を見ていたのだが あ と思った
越前がTシャツの裾をパタパタとあおぎ、生地と躯の間の風通しをよくしようとした。生肌を曝して暑さに溜め息した越前、髪も少し濡れている

「っ…まえ風邪ひくぞ」
「暑いし、大丈夫っショ」
「…上着は」
「だから教室だってば」

海堂はどうしたらいいのかわからなくなっていた
越前の部屋で、海堂の部屋で曝す肌と一緒の肌を校内で曝されて、どうしたらいいのかわからず
しかもそのまま数日前に躯を重ねたことを思いだして赤くなり舌打ちする。あの日は自分が我慢できなかった。ゲームをする越前の後ろから相手の肩に首にうなじに噛み付いた。まだ日は高くて、電気もついていた為に全てを曝させた、曝させた
ゲームに夢中になっていた相手の服に無理矢理手をいれて、その気になるよう
反応は早かった。越前だから、越前だし。弱い部分なんてすぐにわかる。海堂だから、海堂だし。小さく身をよじって手から逃れようとする越前に激しく、恥ずかしくも興奮した
「先輩?」
「……やめろ」
「なにが」
「だらしねぇ、しゃんとしやがれ」
「服?」

黙って頷くと軽く笑って越前は未だに だって暑い と言う。そこで海堂はそんなだらしないことを教室で当然のようにやっている越前を想像して嫌になる

「暑かったらテメェはどこでも服脱ぐのか、あ?」
「ちょ…先輩どうしたの」

どうもこうもなかった 嫌 なのだ
ただ、だらしない格好を所構わず曝す越前も曝せる越前も

「いいか、」

越前の出た腰骨を素肌ままに手に収めて引き寄せた。わっ と急な力に驚いて越前が声をあげる。相手の腰から腹に手を移動させて、徐々にTシャツの中に深く入れてゆく。驚いたのは越前だが、動揺したのは本人である海堂だった

”何をしている?校内で、”

胸に届く前に手を握りしめて滑らせ服から出した。越前を見ると俯き加減に海堂を面白そうに見ていた ああ と海堂はそのまま越前の顔に顔を近付けて、睨む

「いいの?終わり?」
「…なにがだ」
「そんなけ?満足?」
「…っうるせぇ」

満足?満足なわけがなかった。海堂の頭の中にはもう熱しかない。血液が沸騰しかけている。校内じゃなく、いつものどちらかの部屋ならば押し倒して噛み付いている
細いその首に噛み付いて、けい動脈に吸い付いて息すら許さず、

「だから…だらしねぇ」
「…先輩が…?」
「テメェもだ」
「だから暑い」
「ちくしょう」

衝動を止められなかった自分はきっと更にだらしない。ちくしょう と数回呟いてから越前を抱きしめ、うなだれた
くつくつと笑いながら越前が 暑い と言って海堂の背中に手を回した

部屋に入り込む風が埃っぽかったが少し冷たい。カーテンが大袈裟なまでに揺れて膨らむその部屋で
海堂と越前は軽くキスを交わした

「だらしないね」
「テメェのせいでな」
「先輩の方がね」
「っ…クソ…」

仕方ない、仕方ない
まだまだ暖かいとはいえ冬なのだから
自分より体温の高い越前を、だから求めてしまう

”寒いのか?”

寒くなんかなかった。上着もシャツもインナーも着ている。むしろ熱によって熱い


もうすぐ、春がくる
暖かい春が、くる

それでも海堂は越前を求め やまない

「教室なんかでンなことしてんじゃねーぞ」
「ンなこと?キスは先輩としかしないけど?」

馬鹿言ってんじゃねぇ…!! と、罵倒しようとしたが、舌が絡まり未遂で終わる。代わりに顔だけが、赤い


暖冬、確かに 暖かすぎる


寒い寒い、凍えるような、そんなそんな冬だったなら

簡単に温めあえただろうな、





END









あきゅろす。
無料HPエムペ!