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「目大きいね」

覗き込むようにして顔を突き出してきた相手に逃げるように反射的に後ろへ頭をもたげた
ベッドにもたれ掛かり、座る海堂の目の前に四つん這いになって顔を近付け楽しそうに目を輝かせて越前が言った。見た目でわかるように海堂より越前の方が目は大きい。何を言ってるんだと海堂は目を細めて相手を睨んだ

「目玉は小さいかもだけど、目自体は大きい」
「たがら」

どうした と吐き捨てる前に鼻と鼻を擦られて笑われる。何が楽しいのか四つん這いになった体を支えている両手を海堂の腰横に置いて更に近づいてまた笑う

「うん。大きいし睫毛長い」

キレイ 付け加えてうっとりとした目で目を見られ海堂はむず痒くなる。見るんじゃねぇ 低く呟くとまた笑われる。大体越前の方が大きな目をしているし、光りが当たると水晶のように輝く。全体に色素が淡いのだと海堂は思う。肌の色も髪の色すらも

「見るんじゃねぇよ」

堪らず顔を反らすと あ と小さな声を漏らして残念そうな顔をするから更に堪らない。越前は海堂が好きだった。大好きだった。ひしひしと感じるそれがなんとも甘ったるくてむず痒い海堂は、いつも堪らない。自分の目を見て キレイ だと言うのは越前だけで、自分の生活にこんなに踏み込んでくるのも越前だけで、自分自身が同性にもかかわらず 好きだ と思えるのも越前だけだった

「もっと見せてよ」

ねぇ ねだるように言われ、顔を追われる

「っ…テメェこそ見せやがれ」

覗かれるなら逆に嫌と言う程覗いてやろうと海堂は思い、逃げる顔を元に戻して越前の大きく開かれた目を見る
堪らない思いはむず痒く海堂を支配する。部屋に2人でにらめっこのような事をして、笑う相手を愛しく

「先輩。目、疲れた」
「…見るのやめろ」
「ヤダ」
「あぁ?!」
「だって見てたら先輩も俺を見てくれる」
「…なっ」

先輩の目に俺がいる 頬をほんのり染めて生意気に笑って見せる。魅せられた海堂は大きな目の中に自分が映っている事に気付いて真っ赤になった
たまには見合いっこも、にらめっこも悪くない
静かに大きな目が閉じられたのを確認すると海堂はそっと唇を寄せる
薄い瞼が微かに揺れた
中にいるのはきっと自分だと思った自身を海堂は珍しく笑った










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