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暗い中に微かな緑の光が点々と存在する廊下を走り抜ける。銃を持った数人の同行者がルートヴィッヒの周りを囲んでいた。
普段から鍛えているのにも関わらず自分の荒い呼吸と鼓動が耳についてしょうがない。非常灯とは違う色の灯りが見えたあたりで一部が速度を落として、見張りのためにそこへ留まった。あとは突き当たりのドアまで直線の一本道だ。

『緊急連絡。こちらD1区画、ナンバー6が発生しました。急いでください。』

「チッ……」

確か6番は相手の移動行為だったか。まだ遠くに居るが、まだ目的を達成していないうちにこれではまずいだろう。だが焦ってはいけない。数ヶ月かけてようやく訪れた機会なのだ。
もうすぐ、会える。はやる気持ちを抑えて扉を開けると、中は目を凝らせば見渡せるぐらいには薄く明かりがついていた。随分と丈夫そうな扉は内側からしか鍵がかからないという情報は得ていたので、残りの護衛には外で待っていてもらう。

部屋の壁は弧を描いて円形になっていて、中央のガラス張りの小部屋には無数のコードが延びていた。そしてその水槽のような空間に、人のような物体だけがぽつんと放り置かれている。

「っ…兄さん!」

小部屋に駆け入って見た兄の姿は、想像以上に悲惨なものだった。


ぐったりと投げ出された四肢は病的とまでいかずとも前よりは確実に細くやつれていて、硬く閉ざされた目蓋にはその疲れを示すように色濃い隈が落ちている。そして何より異常なのはその頭の、すっかり色が抜け落ちた髪の間から覗く金属。そこから延びるコードが腕にあてられた点滴と絡まって天井から垂れ下がっていた。

「……」

思わず言葉を失う。目を背けたくなったが、時間が無いことを思いだして恐る恐る肩へ触れた。
―――温かい。服越しの体温は低めだが、生きている事実に安堵する。その手を頭へ滑らせてもう一方を腰に回せば、その上半身を軽く起こしてやることができた。どうやら見た目の通りに体重が減っていたようだ。
そしてその振動のためか、ギルベルトが微かに身じろぎしたかと思うと、うっすらと目を開いた。





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by.

短くてすみません…orz
ぐだぐだになりそうだったのでとにかく導入部分を書いてみた。


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あきゅろす。
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