[携帯モード] [URL送信]

祝!烈火十周年
家族へ(ニノ)





お願い、少しだけ待ってて。
みっつ数える間だけでいいから、お願い。
少しだけ、待ってて。




とうさん、
にいちゃん。
最後に会ってからそんなに長い時間がたったわけじゃないのに、もう随分前だった気がするよ。
二度と会えないはずだったから、だから、会えて嬉しかった。
夢でも嘘でも幻でも、もうなんでもいいって思うくらい、会いたかったから。
今、これが夢なら覚めないでほしいって思うくらい。
本当だよ。

でも、
ねえ、
もう笑ってくれないんだね。

とうさん、
普段の恐そうな顔をくしゃって崩して、大きな手で撫でてくれないの。
ロイドにいちゃん、
目元が優しく細まる笑い方、大好きだったのに、どうしてそんなに冷たい目なの。
ライナスにいちゃん、
こっち来いよって、腕を広げながら思い切り笑いながら言ってくれないの。
本当の家族じゃないのに、本当の家族みたいにやさしくしてくれたよね。
あたし、嬉しかったんだよ。
あたしのこと愛してくれるひとがこの世にちゃんといるんだって、初めて知ったの、みんなのところに来てからだったんだ。

あたし、嬉しかった。
なのに今は、もうただ悲しいばかりだった。
大好きなひとたちが、大好きなひとたちだったものが、目の前に次々現れたの。

とうさん、にいちゃん、
ねぇ、あたし、ニノだよ、
ねえ、

どれだけ呼び掛けても返事を返してくれないの。
笑ってくれないの。
撫でてくれないの。
抱き締めてくれないの。

そんなの当たり前なのにね。
だってみんなもう、本当はとっくに。
だって、あたしはもう無くしてしまっていたんだから。

わかっていても縋りつきたくなるのは、このひとたちのこと、本当に大好きだったからなんだ。
あたしがほしくてほしくて、ずっとほしかった家族の時間をくれたひとたちだから。
温かい手のひらを教えてくれたから。
陽だまりで眠る心地よさを教えてくれたひとたちだから。
帰る場所があることの幸せを教えてくれたひとたちだから。
ただいまって、おかえりって、言い合う幸せを感じさせてくれたひとたちだから。
あたし、こんなにたくさんのものをもらったのに、ちゃんとありがとうって言えなかった。
お礼を言わないまま、お別れしちゃったから。
ごめんね、
とうさんもにいちゃんも優しいひとだから、わかっていてくれたかもしれないけど。

ねえ、せめて、笑顔で送るからね。
ニノは笑った顔がいちばんいいって言ってくれた笑顔。
みっつ数える間にはちゃんと泣き止んで、前を向いて、いつもみたいにしているから。
お願い、少しだけ待ってて。
みんなが好きだって言ってくれた笑顔、最後にちゃんと見せるから。
もう少しだけ、待ってて。






2013.4.30


ことかたへのお題:いちごショートケーキにのぼろう/(そう言ったらきみはきっと、怒るかな)/みっつ数えたら、目をあけて http://shindanmaker.com/122300より
















































[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!