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祝!烈火十周年
あなたへ(リン)




わたしは、押し付けるばかりだった気がするの。
見えるところのあなただけを見て、あなたというひとを決め付けていた。
人の痛みもわからない、がさつで、乱暴で、図々しくて、いい加減でって。
でも、全然違ったの。
それを表に出さないだけで、本当はとても気遣いができる人だって、やっとわかってきた。
あけっぴろげで懐の大きいあなたは、とても優しいの。
泣いてもいいんだってあなたに言われて、あんなに素直に泣けたのは初めてだったかもしれない。
優しく腕を差し出すでも抱き留めるわけでもなくて、ただ背中を向けただけのあなたが、どれだけわたしを救ったことか。
誰かの痛みを察して、察するだけじゃなくて和らげて、わたしはそんなあなたに本当に救われた。

ねえ、でも、あなたはわたしを甘やかさないの。
手合せで力を加減しなかったのは、わたしを女だからって差別しなかったあなたの気遣いだわ。
戦士として、わたしの存在を認めて、尊重してくれたからだって、今ならもうわかる。
力の弱さを気にしていたわたしをちゃんと対等だって認めてくれていた。
そのくせ変なところで庇ったり守ったりするから、気になりだしてしまったの。
だから、ずっと見てきたつもりだったのに。
あなたを見つめて、少しずつ本当のあなたを知ることがとても嬉しかった。
それなのに、わたし、何も気付けなかった。
あなたがたったひとりで悲しみに耐えてなんでもない振りをしていたこと。
あんなに慕っていたお兄さんを喪って、平気なはずがなかったのに。
なんでも顔と言葉に出してしまう馬鹿正直なところ、あるくせに、自分の本心は、一番大切な内面は誰にも曝け出さないの。
わたしは、何にもできなかった。
エリウッドはちゃんと気付いていたのに。
気付いて、それでもあなたを尊重して気付かない振りをしていたのに。
そうやってあなたを見えないところで支えていたのに。
一緒に過ごした時間の長さなんて、そんなの関係ない。
わたしはあなたの支えになりたかった。
こんなところでも、わたしを甘やかしてくれないの。
同時に、わたしに甘やかさせてくれないの。

強いあなたが好きよ。
でも、わたしはあなたの弱さも知りたかった。
わたしが曝け出した弱さの分だけ、支えることであなたに返したかった。
ねえ、気付けなかった時間の分はもう取り戻せない。
でも、だからね、どうかこの最後の戦いだけは、わたしにあなたを見守らせて。
あなたの背中を守らせて。
そして戦いが終わったら、わたしはあなたにちゃんと伝えたい。

ねえ、大好きよ、ヘクトル。




2013.4.28














































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