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祝!烈火十周年
兄上へ(ヘクトル)
ことかたへのお題:指先からすり抜けていく/「願うだけならありでしょう?」/こわれないようにこわさないように http://shindanmaker.com/122300 の二つ目より。
若干ずれましたが。






一生、死ぬまで、俺は兄上の元にいるんだと思っていた。
離れるなんて想像の外で、将来を思い描くとき、自分の姿は必ず兄上の傍らにあったのだ。

あちこちに飛び出しては好き勝手に振る舞ってきた俺だけど、兄上のためなら何だってする、そういう思いはあったんだ。
たぶん、兄上も分かってくれていたと思う。
兄を思う限り、俺は本当の無茶だけはしない。
悲しませるとか嘆かせるなど、ありえない。
だから、俺の奔放な行動のほとんどを黙認してくれたんだろう。

型にはまった窮屈な生活なんて想像するだに寒気がするが、それも、ここまで好きなように、思うままにやらせてもらってきたことへの感謝には勝らない。
ずっと傍で、難しいことは分からなくても、何か力になるつもりだった。
盾にでも剣にでもなって。
兄上を助けて生きる、それだけは絶対だと信じて、誓ってここまできたのに。
まさか兄上が座るはずの椅子に自分が座るなんてこと、夢にも思っていなかった。
人の上に立って思慮深く行動するなんていう大層な地位が、自分に向いていないだろうとは分かっている。
縛られるのは嫌いだ。
奔放に、思うままに生きたいと思ってきた。
地位だとか権力だとか権威だとか、争うのを馬鹿馬鹿しいとどれだけ思ってきたことか。
それでも、逃げ出さないだけの覚悟があるのは、他の何でもない、兄上に報いるためだ。
育ててもらった。親代わりに。
愛されて、甘やかされもして、散々我儘ばかりで。
愛情という名の信頼のもとに、どれだけ自分は甘えてきたのだろう。
それなのにここで投げ出したら、いったい何を返せるというのか。
兄上が守りたかった国も民も、引き継ぐのは俺しかいないのに。
もう、もらったたくさんのものに直接返すことはできないけれど、せめて、この兄の愛したオスティアだけは損なうことのないように。
自分のすべてを傾けてオスティアを守り支えてきた兄上に恥じることのないように。
がんばるから。
力不足でも何でも。
だから、どうか見ていてくれるって、信じてもいいよな、兄上。







2013.4.25





























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