国(ヤナフ+ティバーン) 「国と民を守るために、俺はいる」 知ってるよ。 それがどの国の王にも負けない強さの思いであること。 「たとえこの手に余るとしても、同胞の安寧を守りたい」 知ってるよ。 その握りしめた拳は、力の及ぶ限り、守るべきものを決して手放さない。 かなう限り、守るために伸ばされる手に、いったいどれほどの民が救われたことか。 「フェニキスの民が、いつでも変わらず平和と幸福の恩恵を受けられるように」 知っている。 そのための、何をも惜しまない。 真実、国民のためにと心を砕く王。 それは強さだ。 信念と決意に裏付けられた、折れない強さ。 知っている。 だから、ついていくことを選んだ。 じっと見上げていると、もちろん、と、力強い瞳がこちらを向いた。 「お前たちも、な。入ってる」 知っている、それさえも。 守りたいと自分が願う王にこそ、守られていることなんて、もうとうの昔から。 けれど、 「……俺たちは、守られなきゃなんねぇほどヤワじゃねえよ」 言葉にはしない。 「そうか?」 「そうだろ」 いつか、自分こそが、支えになるのだ。 臣下として、仲間として、昔馴染みとして、大切に思われていることはわかっている。 けれど、王がヤナフたちを思うのと同等の強さの、自分から王への思いを、いつか形にするのだ。 だから、言葉だけでも認めはしない。 王に負けない信念を抱えて、睨み付けんばかりに視線を定める。 「そうだろ?」 「そうだな」 目元を緩めた王は、たぶん、そんなヤナフの内心まで、すべてを知っているのだろう。 そんな王だからこそ、この国を統べることができる。 この王だからこそ、ついていくと決めたのだ。
2011.11.16 [*前へ][次へ#] [戻る] |